テザー(Tether)とは?米ドルに連動した時価総額ランキング3位のステーブルコインを解説

by AIGRAM

2022年8月現在、仮想通貨の時価総額ランキングは1位がビットコイン(Bitcoin/BTC)で約61兆円、2位がイーサリアム(Ethereum/ETH)で約31兆円となっています。
低迷が続く仮想通貨市場ですが、2022年3月ごろから価格が上昇し始め、5ヶ月後の2022年8月には時価総額約9兆円規模、時価総額ランキング3位にまで規模を拡大させた仮想通貨があります。

それがテザー(Tether/USDT)です。

この記事では、テザーの概要や主な特徴、そして抱えている懸念点について、詳しく解説します。

目次

テザー(Tether)とは?

テザーとは一言でいうと「米ドルに連動したステーブルコイン」です。

| 項目 | テザー |
| --- | --- |
| 通貨単位 | USDT |
| 誕生年 | 2014年 |
| 価格(2022年8月13日現在) | 約133円 |
| 時価総額(2022年8月13日現在) | 約9兆円 |
| 時価総額ランキング(2022年8月13日現在) | 3位 |
| 発行上限枚数 | なし |
| コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・リザーブス(PoR)|
| 公式サイト |コチラをクリック |

テザーの最大の特徴は「米ドルにペッグ」していること

テザーは、Tether Limited社(テザー社)によって運営されている仮想通貨です。
2014年に公開されたテザーは米ドルと連動するコインであり、ティッカーシンボルは米ドルの「USD」に「T」を追加した「USDT」が使われています。

テザー社は、安定した価値を持つ通貨を設計するという考え方に基づき、米ドルの流通量とテザーの発行を同数にしています。
経済の基盤が弱く、政情的にも不安定な国においては、自国の貨幣を米ドルと連動させるという固定相場制(ドルペッグ)を取ることがあります。
ドルペッグ通貨としては香港ドルが有名ですが、仮想通貨市場においては、このテザーがドルペッグ通貨として機能しているわけですね。

そのため、1USDT=1ドルになるように固定され、大きく価値を変動させる仮想通貨市場において、その価格はほぼ横ばいで推移しています。
価格変動が起きにくいことから、キャピタルゲイン(売買差益)を得ることはできず、テザーは投機対象とはなり得ません。
近年ではテザーが値上がりを見せているようですが、これは単に米ドルが値上がりを起こしているだけであり、仮想通貨市場全体のボラティリティ(価格変動)と比較すると、いかにテザーの価格の振れ幅が小さいのかが理解できるでしょう。

テザーのように、価格が安定するよう設計された仮想通貨を「ステーブルコイン」と呼びます。
ステーブルコインであるテザーは、その特性から、多くの取引所で基軸通貨として利用されます。

2022年8月現在、テザーは1USDT=円前後で取り引きされており、時価総額は約9兆円の規模を誇ります。
また、仮想通貨の市場ランキングでは第3位であり、ステーブルコインとしては首位です。

社会浸透の可能性を秘めるステーブルコイン

ステーブルコインは、主に4つのタイプに分類することができます。

  • 法定通貨担保型
  • 仮想通貨担保型
  • コモディティ型
  • 無担保型

ドルや円などを担保とする「法定通貨担保型」は、法定通貨との交換比率を固定して価格を安定化させており、法定通貨とステーブルコインをお互いに交換したり、別の仮想通貨と交換したりすることが可能です。
「仮想通貨担保型」は、法定通貨の代わりに特定の仮想通貨を担保にしたコイン。
そして「コモディティ型」は、金や原油などの商品価格に連動させている一方で、「無担保型」は担保は保持せず、アルゴリズムで流通量を調整し安定化を図っています。

ビットコイン(Bitcoin/BTC)などの仮想通貨は価値が極端に上下するため、安定した取り引きができず、今のところ実用的ではありません。
しかし、価値が安定しているステーブルコインであれば、ブロックチェーンの利便性を享受しながら法定通貨のように利用できます。
すると、人間を介さないため低コストでスピーディに、そして国境を超えた取り引きでもスムーズに行えるようになるでしょう。
このように、社会に浸透する仮想通貨として、ステーブルコインは大きな可能性を秘めています。

今後、実装が予定されている2つの機能

またテザー社は、仮想通貨テザーに次の2つの機能を導入することが予定されています。

マルチシグネチャー(不正アクセスのリスクを低減)

テザー社が発表したホワイトペーパーには、「マルチシグネチャー」の導入もアナウンスされています。
これは、送金時に複数の署名が必要として不正アクセスのリスクを低減できる技術であり、ビットコインにも採用されている最新のテクノロジーです。
マルチシグネチャーを採用すれば、テザー社がハッキングされても、個人資産の流出が免れる可能性が高くなり、より一層、セキュリティが強固になると期待されています。

スマートコントラクト(取引自動実行システム)

また、人間を介することなく取引を自動実行する「スマートコントラクト」の採用も予定されています。
これが実現すれば、改ざんが不可能となるため契約の正当性を証明できるとともに、取引においても第三者が不要となり、人為ミスをゼロにしてコストも削減できます。

疑惑の目を向けられているテザー

テザーの価値は、同量の米ドルをテザー社が持っているという前提で成り立っています。
しかし、この根拠は今まできちんと開示されていませんでした。
そのため、実は担保資産を持たずにテザーを発行し、得た資金をビットコインに変換して荒稼ぎをしているのでは、という疑惑が持たれていたのです。
これを「テザー疑惑」と呼びます。

再三に渡り、CFTC(米商品先物取引委員会)から、ドルの準備高について文書提出が求められてきましたが応じず、起訴までされてしまったニューヨーク司法当局(NYAG)にも、不正の事実を認めていません。
NYAGとは、2021年2月に罰金1,850万ドルと担保資産の公開を条件に、和解しています。
公開された担保資産は352.7億ドル、そしてテザー社の総負債は351.5億ドル。
この時点では、テザーの価値を担保するだけの資産を保持しているとされており、今後も四半期ごとに財務報告書が開示される予定です。

テザー社によって運営されるテザーは、中央集権的なコインですので、仮に不正が発覚して破綻した場合は、一気に価値が下がってしまうという危険性があります。
そのため、テザーは他の仮想通貨と比較しても、取引先が破綻して契約が履行されず損失を被るリスクである「カウンターパーティリスク」が高いと指摘されています。
また、テザーは世界第4位の時価総額を持っていますので、何かあった時の仮想通貨市場に与える影響は、非常に大きなものとなるでしょう。

まとめ

以上、テザーの概要や主な特徴、そして抱えている懸念点について、詳しく解説しました。

ステーブルコインであるテザーは、米ドルと連動させることで非常に安定しているため、仮想通貨の取引所では基軸通貨として広く流通しています。
一方で、運営するテザー社には経営に疑惑の目が向けられてしまっています。
この疑惑を完全に払拭できれば、社会的な信用が向上し、今後もさまざまな場面で利用されるようになるでしょう。

参考文献

仮想通貨テザー(USDT)の特徴は?将来性やメリット・デメリットを解説

テザー(USDT)とは?購入方法や送金するためにおすすめの取引所を紹介

仮想通貨USDT(テザー/Tether)とは?買い方/購入方法や送金におすすめの取引所を紹介

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