スチーム(Steem)とは?ブロックチェーン上にSNSが存在する仮想通貨を解説。

by AIGRAM

インターネット上において、人と人をつなぐコミュニティを形成しているSNS。
しかし、TwitterやFacebookなどは全て企業のサービスで、中央集権的な運営が行われています。
それらに対して、今回紹介するスチーム(Steem/STEEM)のプラットフォーム上では、分散型SNSによって、独自のコミュニティが形成されているのです。
この記事では、スチームの概要とブロックチェーン上で運営されるSNS「Steemit」、そして分裂の経緯について、詳しく解説します。

目次

スチームはSNSに特化したプラットフォーム

スチームは、世界で初めてソーシャルネットワークに特化したブロックチェーンです。
ユーザーはコンテンツを投稿による報酬を、仮想通貨で得ることが可能となっています。

開発したのはネッド・スコット氏で、イオス(EOS/EOS)で有名となるダニエル・ラリマー氏と共にスチームを設立しました。
なお、ラリマー氏は2017年に辞職するまで、CTOを務めています。

スチームのブロックチェーン上では、最初のアプリとして「Steemit」が公開され、2016年に運営をスタート。
Steemitは、ブロックチェーン技術を用いられていることを除けば、外見などは他のSNSアプリと似通っていますが、従来のSNSが抱えていた問題をクリアしているのが特徴です。

また、スチーム内では次の3種類の仮想通貨が流通しています。

  • スチーム(Steem)
  • スチームパワー(Steem Power/SP)
  • スチームダラー(Steem Dollar/SMD)

ユーザーはコンテンツを投稿して収入を得ますが、全てをスチームで受け取るわけではなく、SPとSDが、それぞれ50%ずつ発行される仕組みとなっています。

なお、スチームのコンセンサスアルゴリズムには、ビットコインと同様「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」を採用しており、発行上限はありません。

2021年11月現在、スチームは1STEEM=70円前後で取り引きされており、時価総額は約270億円、仮想通貨の市場ランキングでは第279位の規模を保持しています。

SNSに加え、3つの仮想通貨を持つスチーム

ソーシャルネットワークサービス「Steemit」

ソーシャルネットワークサービス「Steemit」では、いいねやコメントを得ると、投稿者に報酬が発生します。
報酬は投稿者だけではなく、アクションした読者にも、コミュニティに貢献したとしてスチームが配布されるのです。
これによって、既存のSNSとは異なり、サービス内に広告を表示させることなくマネタイズが可能となっています。
この仕組みには、いいコンテンツが評価されるなど、信頼を可視化できるという利点もあります。

プラットフォーム上で流通する、3つの仮想通貨

前述の通り、スチームのプラットフォーム上では、3つの仮想通貨が流通しています。
1つ目の「スチーム(Steem)」は、スチーム上の基幹通貨です。
Steemは1年で9.5%が新規発行され総量が増え続けており、相対的に価値が下がる仕組みになっています。
そのため、取引所において後述するSPやSDに換金し、価値を維持する必要があるのです。

2つ目の「スチームパワー(Steem Power/SP)」は、スチーム上のブロックチェーン上のサービスサイト「Steemit」内で使用できる通貨です。
金利が発生するため、大量に保持しておくと利息が得られるメリットがありますが、他者への送金はできません。
また、SteemからSPへの変換は即時にできる一方で、SPからスチームへの変換は1週間に1回、保有量の13分の1だけという制限があります。
あえて時間がかかるようにすることで、スチームの供給量を抑えているのです。

3つ目の「スチームダラー(Steem Dollar/SMD)」は、1SMD=1USDで固定されており、米ドルと等価交換できるペッグ通貨です。
SPと同様にコンテンツ投稿に対するインセンティブとして支払われ、取引量に応じて利息が発生します。
送金や売買も可能であり、SPとは違ってSteemへの変換に制限はありません。
大きく価値が変動する仮想通貨において、法定通貨に換金ができる点は大きなメリットになります。

多彩な展開を見せる分散型アプリケーション

2019年12月には、スチームのブロックチェーン上において、分散型アプリケーション「dApps」の開発を支援する「SMT(スマートメディアトークン」がリリースされました。
これによって、誰でもスチームのブロックチェーン上で動作するアプリケーションを開発ができるようになったのです。

早速、インスタグラムのような写真投稿サービスの「Appics」や、YouTubeに似た動画投稿サービスサイト「DTube」など、さまざまなサービスが誕生していきました。
これらのサービスでは、Steemitと同じように、コンテンツ投稿や「いいね」の獲得でトークンが支払われるため、広告表示なしでマネタイズできるようになっています。
さらに、スチームとは別のトークンも流通しており、分散型取引所において売買が可能です。

対立と分裂

仮想通貨バブルの反動で市場が低迷していた2018年、Steemitは従業員の70%を解雇するなど、財政が厳しくなっていきました。
そして2020年、TRON財団によってサービスは買収。
買収の影響で、Steemit上では上記の3つのトークンに加えて、もともとTRONが持っていた「TRX」と呼ばれる仮想通貨も付与されるようになりました。

買収当初は、Steemitやユーザーにとって救世主と受け止められていたTRONでしたが、スチームの運営を左右する「投票権」をめぐって、徐々に対立するようになっていきます。
買収によってTRONは、大量の投票権を握りました。
それに対してSteemitは、中央集権的な運営になることを危惧し、TRONが持つ投票権が無効になるソフトフォークを実施。
対抗するTRONは、ソフトフォークを無効化するハードフォークを実行し、結果的に勝利しました。

敗れたSteemitは、TRON側が保有するスチームを除いたトークンに対してハードフォークを敢行します。
その結果、新たに「HIVE」というトークンが誕生、分裂しました。
SteemitのSNSサービスも、同じシステムのまま「HIVE Blog」に移行。
SteemitとHive Blogは、全く別のサービスとして、現在もそれぞれ運営されています。

Hive Blog側では、Steemit時と同様に「HIVE」「HIVE POWER(HP)」「Hive Dollars(HD)」の3つが流通しています。
そのHive、2021年11月現在は1HIVE=90円前後で取り引きされており、時価総額は約360億円、仮想通貨の市場ランキングでは第179位と、スチームを凌ぐ規模に成長しています。

まとめ

以上、スチームの概要とブロックチェーン上で運営されるSNS「Steemit」、そして分裂の経緯について、詳しく解説しました。

Steemitはまだ発展途上なサービスであり、TwitterやFacebook、英語圏で人気のRedditなど、大手のSNSと比較しても発信力はまだ今ひとつの存在です。
それでもサイト上では、コンテンツによっては数万円から数百万円単位での報酬が発生するケースも見受けられており、Steemitが標準的なSNSとして世界的に使われるようになれば、利用者の増加で報酬はさらに上がるのではないでしょうか。

ただ残念なことに、分裂によって影響力が分散されてしまっています。
今後は、分裂したHiveとともに、その成長を注意深く見ていく必要があるでしょう。

参考文献

仮想通貨 Steem(スチーム)とは|今後の将来性について

仮想通貨Steem(スチーム)とは?特徴や将来性を調査!投稿で報酬GET?

[仮想通貨Steem(スチーム)とは?将来性や今後、取引所や買い方を徹底解説!(]https://coin-media.jp/19811)

【第3回】あの仮想通貨はいま「steemit:STEEM」

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