フィロ(Firo)とは?ゼロ知識証明で匿名性を担保する仮想通貨を解説。
匿名性の高さを特徴とする仮想通貨としては、「モネロ(Monero/XMR)」や「ダッシュ(Dash/DASH)」、そして「ジーキャッシュ(Zcash/ZEC)」などが有名です。
そのジーキャッシュからフォークした上で、セキュリティをさらに強化したコインが、今回紹介する「フィロ(Firo/FIRO)」となります。
この記事では、フィロの概要や主な特徴、そして将来性について詳しく解説します。
目次
ゼロ知識証明で匿名性を担保するフィロ
フィロは2016年10月、匿名性の高い仮想通貨のジーキャッシュから、ハードフォークすることで誕生しました。
その経緯から、ジーキャッシュのセキュリティ強化版とも言えます。
なお、当時の名称はジーコイン(ZCoin/XZC)でした。
創設者は、仮想通貨交換所サタン(Satang)の創業者でもある、ポラミン・インソム氏です。
彼はジョンズ・ホプキンス大学で情報セキュリティの修士号を取得しており、以前にはタイ王国軍のサイバーウォー部門で少尉を務めた経歴も持ちます。
また、ルーベン・ヤップ氏という人物も、2016年にジーコインが立ち上がった当時から参加しており、現在においてもプロジェクト全体の開発や戦略をリード。
彼は、当局による検閲に対抗してVPNサービスを設立した経緯から、金融プライバシーについて深い造詣を持っており、コインデスクをはじめ、BBCやフォーブス、ナスダックなどで解説記事を掲載するなど、この分野においてとても高い評価を得ています。
大きな特徴としては、暗号学である「ゼロ知識証明」(ゼロ・ナレッジ・プルーフ)の応用によって、匿名性が担保されている点です。
ジーキャッシュにも採用されているゼロ知識証明は、取引に関わる全てのデータを隠匿します。
しかしフィロでは、高いセキュリティを実現すべく、あえて「取引量」だけを公開しているのです。
そして2020年10月、ジーコインから「フィロ」にリブランディング。
ティッカーシンボルも「FIRO」に変更されました。
2021年12月現在、フィロは1FIRO=720円前後で取り引きされており、時価総額は約90億円、仮想通貨の市場ランキングでは第511位の規模を保持しています。
取引量のみを公開して、高いセキュリティを実現
ビットコイン(Bitcoin/BTC)など一般的な仮想通貨においては、送金や受金に使われるアドレスや取引量は全て公開されます。
これによって、誰でも取引内容の確認が可能となり、高い透明性を実現しました。
一方で、取引履歴をたどることで資産額などを知られてしまうというリスクがあり、個人情報保護という観点で見ると非常に問題です。
そこで使われるのが、暗号学の考え方である「ゼロ知識証明」という手法です。
ゼロ知識証明を使えば、トランザクションに関する情報を明かすことなく、情報ゼロのままその正当性を証明できます。
事実、ゼロ知識証明を採用したジーキャッシュでは、取り引きに関わる全ての情報が伏せられており、高い匿名性を実現しています。
しかし、全てが匿名化された仮想通貨は、バグや改ざん、そして攻撃を受けた時に追跡が困難になってしまうというデメリットがあるのです。
そこで、同じゼロ知識証明を採用しているフィロでは、送金者および受取者の情報は完全に非公開ですが、あえて取引量だけは公開しています。
これによってプライバシー性は少々落ちてしまいましたが、ハッキングされた時の対処は容易になり、むしろ総合的なセキュリティは向上していると言えるでしょう。
MTPを採用し、PoWのデメリットを解消
フィロの最高発行枚数の2,100万枚であり、4年に1度の半減期や約10分のブロック生成速度など、ビットコインとの共通点が多く見られます。
これは、フィロの分岐元であるジーキャッシュが、ビットコインからフォークしたものだからです。
一方で、コンセンサスアルゴリズムは「MTP(マークル・ツリー・プルーフ)」という承認システムを採用しています。
MTPは、ビットコインが採用する「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」の一種。
PoWは高いセキュリティを確保できる利点がありますが、承認作業の競争が起きることで消費電力量が増大し、環境に負荷をかけているというデメリットが問題視されています。
MTPでは、ASICと呼ばれる専用機によるマイニングができないようなプログラムコードが導入されているため、PoWのデメリットを解消できるのです。
これによって、特定のマイニング集団による集中を無くしてセキュリティ問題も解決し、マイニング自体の平等化も実現しています。
フィロの将来性
フィロは、2017年のハードフォークによって、取引の正当性を評価するノードである「Znodes」を実装しました。
Znodesはフィロにおいて、取引の承認やマイニングを担当する重要なノードです。
そのため、Znodesになるには1,000FIROを担保として積む必要がありますが、承認作業を行うことで報酬が支払われます。
2018年11月には、タイ民主党の党首選挙においてフィロ(当時はジーコイン)のブロックチェーンが活用され、実際に12万7,000票もの投票が行われています。
これは、ブロックチェーンを使った世界初の大規模な政治選挙となりました。
2020年にフィロへブランドが変更された後も、さまざまな機能を実装すべく開発が進んでいます。
また、フィロを保管するウォレットとして、公式のデスクトップウォレットとモバイルウォレットが公開されており、ユーザビリティも考慮されています。
一方で、取引者のプライバシーが守られる匿名性の高い仮想通貨は、マネーロンダリングや違法薬物の販売などの犯罪に悪用されかねないと、近年、世界中で問題視されています。
フィロの将来性は、この問題をどのような形でクリアするのかにかかっていると言えるでしょう。
なお、取引量だけは公開されているとは言え、匿名性の高いコインということもあって、日本での取り扱いはありません。
通産省のホワイトリスト入りは難しく、今後も日本での上場は見込めないでしょう。
フィロはバイナンスやBittrexに上場していますので、別の仮想通貨を送金すれば入手は可能です。
まとめ
以上、フィロの概要や主な特徴、そして将来性ついて詳しく解説しました。
フィロは匿名性の高い仮想通貨ですが、取引量だけをあえて公開することで、セキュリティをさらに向上させています。
しかしながら、匿名性の高い仮想通貨は、他のコインも含めて先行きは不透明です。
秘匿性は一定のニーズがありますので、今後の発展には他との差別化が鍵となるでしょう。
参考文献
Zcoin(ゼットコイン)とは?仮想通貨XZCの取引所での買い方と今後の将来性について解説!
仮想通貨ZCoin(ゼットコイン・XZC)とは?特徴・買い方・取引所・将来性・チャート・マイニング・ニュースを解説