ファクトム(Factom)とは?ブロックチェーンを活用した、分散型のファイル管理プラットフォームを解説。

by AIGRAM

登記簿謄本や住民票、印鑑証明などの公的な書類は、管理がバラバラであり、取得にはそれぞれの行政機関まで赴かなくてはなりません。
しかし、ブロックチェーン技術を応用すれば、重要な書類を一元化して管理できるようになると期待されています。
ファクトム(Factom/FCT)は、それを実現するプラットフォームの1つです。
この記事では、ファクトムの概要や特徴、そして展開されるプロジェクトや将来性について、詳しく解説します。

目次

分散型ファイル管理プラットフォームのファクトム

ファクトムは、あらゆる電子データを保管できる、分散型ファイル管理プラットフォームです。
2015年、アメリカのテキサス州に本拠を置くFactom社によって開発されました。
ファクトムは、世界一の時価総額を持つ仮想通貨であるビットコイン(Bitcoin/BTC)の技術をベースとしており、ブロックチェーン上に「レイヤー」と呼ばれる層をつくって、そこに電子データを分散管理しています。

ブロックチェーンには、取引履歴を改ざんできないという特徴があり、ファクトムはこの長所を最大限に利用。
今までバラバラに管理されていた、登記簿謄本や住民票、印鑑証明、保険や金融の証券などの重要な書類を、一元化して管理することが可能となるのです。
これによって、市役所や法務局などの公的な第三者機関が無くても、重要な書類を安全かつ確実に証明できます。

近年は新型コロナウイルスの影響もあり、さまざまなものが急速に電子化されています。
ファクトムは電子化に伴う諸問題を、一気に解決するプラットフォームだと言えるでしょう。

ファクトムのブロックチェーン上には、「ファクトイド(FCT)」と「エントリークレジット(Entry Credit)」という、2種類の仮想通貨が流通しています。
ファクトムはエントリークレジットを支払って利用しますが、クレジットの入手にはFCTからの変換が必要となります。
また、取引所で取り扱う「ファクトム」とは「FCT」を指しますので、投資目的でファクトムを保有するのであれば、FCTのままで持っていなくてはなりません。

2021年12月現在、ファクトムは1FCT=198円前後で取り引きされており、時価総額は約20億円、仮想通貨の市場ランキングでは第976位の規模を保持しています。

2種類のコインによってセキュリティを確保

前述の通り、ファクトムにはFCTとエントリークレジットの、2種類のコインが流通しています。
ファクトムを利用する際は、エントリークレジットを料金として用意しなくてはなりません。
そこで「ファクトイドチェーン(Factoid Chain)」というチェーンを使い、FCTからエントリークレジットに変換するプロセスを経る必要があります。
この複雑な工程は、高いセキュリティを確保するという目的があります。
エントリークレジットは記録の入力や投票しか機能がなく、他の公開鍵への送信もできません。
つまり、情報を保持していないため、ハッカーがハッキングするメリットがあまりないのです。
ただし、一度エントリークレジットに変換した場合、FCTには二度と戻すことはできませんので、注意が必要となります。

さまざまなプロジェクトを展開していたファクトム

ファクトムではその特性を生かし、さまざまなプロジェクトが展開されていました。
代表的なプロジェクトとしては、以下の2つです。

1つ目は「スマートロック(dLoc by SMARTRAC)」。
これは、スマートロックという会社と共同で開発したプロジェクトです。
具体的には「dLocステッカー」と呼ばれるQRコードのようなものをつくって、読み取るだけで書類のデータにアクセスができるという画期的なもので、主に医療分野で活用が期待されています。
医療現場において、カルテ情報や薬の使用歴、アレルギーなどをブロックチェーン上に記録しておくことで、今までは医療機関ごとに分かれていた情報を、ファクトム上でまとめて共有できるようになります。
つまり、「dLocステッカー」があれば、かかりつけではない病院における急患にも、即座に対応可能となるのです。
また医療機関にとっても、書類保管のコストが大幅に減り、業務効率や経営内容の改善が期待できます。
さらに、ブロックチェーンによって改ざんは不可能であり、情報の信用性も担保されるのです。

そして、2つ目は「ファクトムハーモニー(Factom Harmony)」です。
こちらは、ファクトムでアメリカの住宅ローンの情報を管理するプロジェクトとして、進められています。
不動産の業界では、登記や住宅ローンなどによって管理すべきデータが膨れ上がっており、全体でも何兆円というコストがかかっています。
ファクトムハーモニーでは、この膨大なデータをブロックチェーン上で管理しますので、事務にかかる人件費が削減でき、手数料も安価になります。
大幅なコストカットを実現できる上に、改ざんができないため、公文書偽造などのトラブルは発生する恐れはありません。

ファクトムの将来性

ファクトムは、マイクロソフト元会長夫妻が創設した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」と提携し、5,000万ドルの資金提供も受けました。
2018年には、マイクロソフト自体とも技術提携を果たしています。
また、アメリカの大手不動産ローン会社である「Equator社」も、ファクトムハーモニーを自社のプラットフォームに統合することを発表しており、その将来性は期待できるものでした。
事実、2018年初頭の仮想通貨バブル時においては、一時8,600円の最高値をつけています。

ところが残念なことに、ファクトムでプロジェクトを推進していた「Factom,Inc」は、運用資金の不足が原因で、2020年4月に解散してしまいました。
ファクトムのシステム自体はFactom,Inc.の所有物ではないため、現在も運用や開発は継続されており、オープンソースの開発を手掛ける「Factom Protocol Operators」も存続しています。
しかし、2021年5月の上昇相場においても300円まで値を戻すのが精一杯で、最盛期まで価値を上げるためには、画期的なプロジェクトなどが必要でしょう。

なお、ファクトムはコインチェック社が取り扱っているため、国内でも簡単に入手が可能です。

まとめ

以上、ファクトムの概要や特徴、そして展開されるプロジェクトや将来性について、詳しく解説しました。

国内の取引所でも取り扱いがあり、日本でも期待されていたファクトムですが、プロジェクトを推進していた企業が解散してしまうなど、状況は思わしくありません。
しかし今後、ファクトム上で別の画期的なプロジェクトが立ち上がれば、プラットフォームとして成長し、価値も上がる可能性があります。
今後も、ファクトムの動向には目が離せないでしょう。

参考文献

ファクトム(Factom/FCT)の今後の将来性や特徴は?儲かる?

ファクトムとは何か?特徴や今後の価格予測などを解説

ファクトム(FCT)とは?今後の見通しや将来性を予想|価格はいくらになる?

ファクトム(Factom/FCT)の今後・将来性はどうなる?

「ファクトムの開発企業解散」で独自取材 仮想通貨FCTの存続について

【2021年】ファクトム(FCT)とは?今後の見通しや将来性・価格予想を徹底解説

時価総額ランキング