イーサリアムクラシック(ETC)とは?イーサリアムから分岐し、独自に発展を続ける仮想通貨を解説。
中央管理者がいない仮想通貨では時に、その運営方法を巡って対立が起き、分裂することがあります。これは「ハードフォーク」と呼ばれる現象です。
仮想通貨市場ランキング第2位の、イーサリアム(Ethereum/ETH)においても例外ではなく、ある大きな出来事によって意見が対立し、2つのブロックチェーンに枝分かれしました。
その1つが、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic/ETC)です。
この記事では、イーサリアムクラシックの概要や誕生の経緯、そして今後の動きについて詳しく解説します。
目次
イーサリアムクラシック(ETC)とは
イーサリアムクラシック(ETC)は、イーサリアムから分岐して生まれた仮想通貨です。
ブロックチェーンはイーサリアムから引き継がれているため、スマートコントラクトや分散型アプリケーション(DApps)のプラットフォームなど、基本的な機能は変わりません。
ただ、イーサリアムは今後、コンセンサスアルゴリズムを「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」へ移行を予定していますが、イーサリアムクラシックは引き続き「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」の使用を続けます。
これは、イーサリアムクラシックが「重大な欠陥がない限りはプロトコルレベルの修正はしない」という、非中央集権を重視した姿勢の表れでしょう。
イーサリアムクラシックは、分裂時にユーザー数が減少したことによって、処理スピードが改善され、送金の利便性はイーサリアムより向上しました。
さらにイーサリアムとの差別化を図るべく、全ての物をインターネットにつなぐ技術「IoT」のプラットフォームとして、それに特化した開発が行われています。
そして、発行上限のないイーサリアムとは違い、イーサリアムクラシックには「2億1,000万枚」という上限が設定されています。
有限の資産とすることでインフレを防ぎつつ、希少性を高める狙いです。
マイニングの報酬が半分となる「半減期」もありませんが、500万ブロックを生成するごとに、その報酬が20%減少する仕組みとなっています。
イーサリアムクラシックの時価総額は、2021年9月現在、8,220億円の規模であり、仮想通貨の市場ランキングで第27位につけています。
なお、イーサリアムクラシックは国内の取引所で取り扱いがあり、安心して入手することが可能です。
ハッキング事件をきっかけにイーサリアムから分裂
イーサリアムの分裂のきっかけは、2016年に起こったハッキング被害です。
この出来事は、一般的に「THE DAO事件」と呼ばれています。
THE DAOとは、イーサリアムのプラットフォーム上で立ち上がった、分散投資プロジェクトの名前です。
THE DAOは非中央集権で自立しており、投資先はプロジェクトの参加者による投票で決定され、利益が出れば参加者に分配されるという仕組みでした。
2016年5月にはICOを実施し、当時のICO最高額となる150億円を調達しています。
しかし、THE DAOにはセキュリティバグがありました。
その脆弱性をハッカーに突かれた結果、当時のレートで52億円分という、巨額のイーサリアムが盗み出されてしまったのです。
幸いにもシステムの仕組み上、盗まれた資金は27日間は移動できなかったため、この時間的猶予を使って、コミュニティではさまざまな議論が交わされていきました。
最終的に、ソフトウォークとハードフォークという、2つの対処方法が提案されたのです。
ここでのソフトウォークとは、ハッカーの口座を凍結する方法。
ハッカーが資金が入っている口座を取り出せなくなる代わりに、被害者も盗まれた資金が戻ってきません。
一方のハードフォークとは、仮想通貨の仕様変更を指します。
ハッキング前までブロックチェーンを遡って分岐させ、ハッキングを受けたブロックチェーンを放棄することで、盗難自体をなかったことにする方法です。
最終的に、イーサリアムのコミュニティの9割が、このハードフォーク案に賛成。
ハードフォークが実行され、新しいブロックチェーンが正式なイーサリアムとなり、当事件は終結しました。
しかし、ハードフォークによって「管理者のいない非中央集権というイーサリアムの仕組みに反した」と、納得できない参加者も多くいました。
イーサリアムの方針に疑問を抱いた勢力によって、オリジナルのブロックチェーンは継承され、2016年7月、イーサリアムクラシックが誕生したのです。
イーサリアムクラシックの今後
イーサリアムクラシックは誕生以降、100円〜200円前後で推移してきましたが、仮想通貨バブルとなった2018年初頭には、5,000円まで高騰しました。
その後、落ち着きを取り戻しましたが、2020年末から翌年5月にかけて再び15,000円という高値を記録。
しかし、2021年に入ると、ビットコイン(Bitcoin/BTC)の下降相場に追従して下落していきました。
2021年9月の時点では、1ETC=6,100円で推移しています。
このように、イーサリアムクラシックは、ビットコインや本家イーサリアムの価格動向に影響を受けやすく、今後の値動きもそれらの仮想通貨の相場から予想する必要があります。
また、イーサリアムクラシックは、現在までに3回の「51%攻撃」を受けています。
51%攻撃とは、非中央集権の仕組みにおける問題の1つであり、悪意のある人間によってネットワークの承認権の5割以上が支配され、不正な取引が行われることを指します。
複数回の攻撃により、他の仮想通貨と比べてセキュリティが不安視されているのです。
実際に複数の取引所が、イーサリアムクラシックの上場廃止を視野に入れていると公言しています。
上場が廃止されると、取引できる場所がなくなってしまうため、価格は暴落します。
したがって、このセキュリティ面の対応についても、注視していく必要があるでしょう。
まとめ
以上、イーサリアムクラシックの概要や誕生の経緯、そして今後の動きについて詳しく解説しました。
イーサリアムからハードフォークして誕生したイーサリアムクラシックは、本家のイーサリアムとの差別化のため、IoT分野の開発に注力しており、今後の活用が期待されています。
一方で、セキュリティ面に不安が残りますので、その動向やリスクの想定をしながら、投資していくといいでしょう。
参考文献
イーサリアムクラシック(ETC)とは?誕生経緯と投資家目線の保有メリット!おすすめの取引所3選も紹介 | 株式会社ZUU|金融×ITでエグゼクティブ層の資産管理と資産アドバイザーのビジネスを支援
イーサリアムクラシックとは? | 仮想通貨ビットコイン(Bitcoin)の購入/販売所/取引所【bitFlyer(ビットフライヤー)】
IoT分野での活用も期待される!イーサリアムクラシックの将来性 - DMMビットコイン
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