イオス(EOS)とは?ICO史上最高額を調達した仮想通貨を解説

by AIGRAM

ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは、新しい仮想通貨のプレセールのことです。
企業はICOによって、新たに発行した仮想通貨を売り出し、資金を調達します。
このICOを、2017年6月から1年に渡って実施し、ICOの史上最高額となる4,400億円を調達して、大きな注目を集めた仮想通貨があります。
イオス(EOS/EOS)です。
この記事では、イオスの特徴や現在の状況について、詳しく解説します。

目次

分散型アプリケーション開発のインフラ、イオス(EOS)

イオスは、ブロックチェーンやDapps(分散型アプリケーション)開発に特化したプラットフォームを目指し、企業の間で広く利用されることを想定して開発されました。
開発したのは、2017年に設立された、ブロックチェーンソフトウエア企業のBlock.one(ブロック・ワン)です。
またイオスのプロジェクトは、ブロックチェーンの課題である、合意形成の遅さを解決しようという試みも行っています。

前述の通り4,400億円を調達したICOは、2017年に1年間をかけて、イーサリアム(Ethereum/ETH)のプラットフォーム上で実施され、2018年6月にICOを完了させると同時にメインネットへ移行。
現在は、イオス独自のブロックチェーンで取引が行われています。

イオスは、同じく分散型アプリケーションのインフラである、イーサリアムに近い性能を持っており、より優れた面もあります。
そのため、当初は「イーサリアムキラー」と呼ばれ、仮想通貨の市場でも時価総額トップ10の常連になるなど、非常に期待されていました。

しかし、2021年9月現在、時価総額は5,150億円にとどまっており、市場ランキングも33位に沈んでいます。

承認システムDPoSにより、早い処理速度を実現

イオスの最大の特徴は、仮想通貨の取引記録であるトランザクションにかかる時間が、他の仮想通貨と比べて圧倒的に早いことです。
ビットコインのトランザクション処理速度は1秒当たり6件、イーサリアムは同15件と言われていますが、イオスの場合は、1秒間で1,000,000件以上を処理できます。

これは、合意形成の仕組みであるコンセンサスアルゴリズムに、DPoS(デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)という、新しい概念を採用しているからです。
コンセンサスアルゴリズムは、ビットコイン(Bitcoin/BTC)のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)や、カルダノ(Cardano/ADA)のプルーフ・オブ・ステーク(PoS)などがあります。

DPoSでは、イオスを持つユーザーに投票権があり、投票によって選ばれた人(ノード)が、承認作業を行います。
このノードを「ブロックプロデューサー」と呼び、ビットコインでいうマイナーに当たります。
PoWを採用するビットコインはマイナーが非常に多く、合意形成に時間がかかってしまいますが、イオスはブロックプロデューサーが21しか存在しないため、承認作業が早く済みます。
ブロック生成時間についても、10分かかるビットコインに対して、イオスは0.5秒で生成してしまうため、スピードあるトランザクションが実現できるのです。

またPoSは、その通貨の保有量が多い人ほど、承認の役割を担う確率が高くなる仕組みであるため、資金力があるほど有利で、流動性も妨げられるというデメリットがあります。
PoSの一種でもあるDPoSは、イオスユーザーへの投票権付与によって、このデメリットを解消しています。

イオスのブロックチェーンでは、取引手数料ゼロ

イオスのもう1つの特徴が、取引手数料がかからない点です。

ビットコインなどの仮想通貨において、ブロックチェーン上での取引にはマイナーによる承認作業が必要です。
そのマイニング報酬に充てるため、取引時には手数料がかかります。

一方、イオスはマイニングによる報酬を、運営側が保有しているトークンから支払っているため、ユーザーは手数料を負担せずに済みます。
分散型アプリケーションによるサービス提供など、イオスをビジネスで採用する企業にとっては、コストを大きく削減することが可能となりますので、非常に魅力的な仕組みです。
また、アプリのユーザーにとっても、利用料に手数料が上乗せされないため、安価で利用できるという利点もあります。

急落後、価格を持ち直せなかったイオス

2017年6月の公開直後は、時価総額でトップ10入りしていたイオスですが、現在は30位以下に沈んでいます。
どうしてイオスは、価格を持ち直せなかったのでしょうか。

イオスは、2017年後半からの仮想通貨バブルの際、他の仮想通貨と同様に、大きく価格を伸ばしていきました。
その後、バブルは崩壊して他の仮想通貨と同様に価格も急落しますが、ICOで多額の資金を集めて注目されたイオスは、2018年にはトップ5にも入るほど急騰します。
しかし再び急落し、2020年後半の強気相場にいたっては、他の仮想通貨と連動せず、大きく伸ばすことができませんでした。

その要因は、いくつかの懸念材料が出てきたためです。
まず、真偽は不明ですが、ICOで集めた4,400億円という巨額の資金を、イオスの開発以外の用途に流用したという噂が立ってしまいました。
また、そのICOの際、アメリカの証券法に基づいた登録を行わずに実施していたことも明るみとなりました。米国証券取引委員会からは、24億円の罰金が課せられています。
これらの行為によって、投資家からの信頼は大きく失墜し、イオスは価格を下げてしまったのです。
そして、イオスベースの分散型アプリケーションを標的としたハッキングが相次いだため、その安全性も疑問視されてしまいます。
さらに、イオスの大半の保有者である中国人によって、相互投票や投票権の買い取りが頻発。
残念ながら現在は、DPoSが目指す理想とは程遠い、一部の人間による独占状態となっているのです。

なお、イオスは日本の仮想通貨取引所での取り扱いはありません。
イオスの入手には、国内の取引所で別の仮想通貨を購入して、CoinbaseやBinanceなど、海外の取引所に送金する必要があります。

まとめ

以上、イオスの特徴や現在の状況について、詳しく解説しました。
イーサリアムキラーとして、登場時は非常に期待されたイオスでしたが、残念ながら、上記の要素によって大きく信用を損ない、価格は低迷しています。
ネガティブなイメージがついてしまっているイオスに、いま手を出すのは、懸命ではないでしょう。

参考文献

仮想通貨EOS(イオス)とは?特徴と今後の予想・見通しを紹介 | InvestNavi(インヴェストナビ)

イオス(EOS)|投資情報・リアルタイム価格チャート

仮想通貨EOS(イオス)の特徴、価格、取引所、将来性は?

いわくつき仮想通貨EOSの運営会社Block.oneが巨額ビットコイン保有 時価総額の2倍 | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン

2018年の仮想通貨EOSのICO、仮装売買で価格を操作か=テキサス大学教授が主張 | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン

イオス(EOS/EOS)の詳細と特徴とは? | NEXTMONEY|仮想通貨メディア

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