現役行政書士が検討する、ブロックチェーンの可能性と未来

by AIGRAM

近年、「ブロックチェーン」という用語をよく耳にするようになりました。

このブロックチェーン技術は、IT分野に携わる方のみでなく、今後は社会の基盤を構築し得る存在となります。

ブロックチェーンとは端的に言えば、データベースの共有化です。

このデータベースの共有化が進歩すれば、現在、業種や業態、企業間において様々な情報システムを利用していることによる不具合を解消できる可能性を秘めています。

データベースの共有化が進み、業種や業態、企業間、強いては国境をも超えた情報ネットワークが構築され、誰もが多くの利益を享受することができる可能性があるのです。

こちらの記事では、行政書士(行政)の観点からブロックチェーンの可能性と未来について記載しています。

目次

新たなビジネスと行政手続き

ブロックチェーンは、元々仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として開発がなされました。

そのため、仮想通貨=ブロックチェーンという認識をされている方も少なくありませんが、厳密には異なる概念となります。

そのため、仮想通貨のみでなく、今後ブロックチェーン技術を応用した新たな分野やビジネスが生み出されることが予想されます。

この点、現段階においても着実に法整備が行われています。

登録(申請)する必要があるかの個々の要件は割愛をさせていただきますが、仮想通貨に関するビジネスを行おうとした場合、「仮想通貨交換業」、「暗号資産交換業」等の登録(申請)を受けなくてはなりません。

つまり、行政の意向としては、仮想通貨の業務を行う場合には、その旨を国に申し出てくださいというものになります。

こちらの点は、建設なら建設業許可、旅行会社なら旅行業登録等の手続きが必要となるなど、行政の許可を得なくてはならない業種も数多くあります。

端的に言えば、国の根幹を作るような重要な業種の場合、顧客や社会の利益を守るために行政が指定する許認可や登録を受けなくてはならないということです。

つまり、自分自身に専門分野(仮想通貨や暗号資産等)の知識があったとしても、行政が提示する要件を満たし登録を受けなければ業務を行うことができません。

また、この行政の規定は適宜変更または新設されることが予想されるため、ブロックチェーンに関するビジネスを始める場合には、行政書士等の専門家にご相談をいただくことをお勧めいたします。

実務上のリスク

前述の通り、仮想通貨等のブロックチェーンを用いたビジネスを展開する場合、許認可や登録が必要な場合があります。

しかし、現実問題として、このブロックチェーンに関する法整備は十分ではありません。

つまり、今後のブロックチェーン技術の進展及び社会有用性等を包括的に検討し、規定が定められることとなります。

そのため、法整備の進捗状況及び法の規定自体も、現段階においては不透明な部分が多いのが現状です。

また、ブロックチェーン技術が様々な分野に利用され始めた場合、現存の許認可や登録の他に別途行政手続きが必要になることも予想されます。

例えば、建設業であれば現在の建設業許可と併せて「建設業に関するブロックチェーンに関する登録」を受ける必要が出てくるかもしれないということです。

仮に適切に行政手続きを遂行していない場合、罰金や行政罰等の可能性も考えられるため、ブロックチェーンに関するビジネスチャンスは広がっている反面、リスクも有していることの認識が必要です。

契約締結時におけるリスクヘッジとなる

業種や業態に関わらず、ビジネス遂行において、契約の締結は避けて通ることができません。

対取引業者や顧客など、日常的に契約の締結が必要となります。

つまり、取引業者や顧客との契約において取得した情報を適切に取り扱わなくてはなりません。

しかし、近年、大手企業においても、情報漏洩に関する報道が多くなされるようになりました。

大手企業におけるセキュリティの構築においても、情報漏洩を避けられないとなると、資力の乏しい中小企業の情報セキュリティには疑問が発生します。

こちらの点、ブロックチェーン技術が進展していくことによって、情報漏洩の問題を解決できる可能性があります。

複数のシステムがそれぞれ情報を保有し、常に同期される「分散型台帳」であるブロックチェーン技術を利用することで、契約データ及び個人情報等を適切に保管でき、かつ、契約データの改ざんも防止することができるためです。

ブロックチェーン技術が進歩することで、契約安定性が担保され、日本国内のみでなく、国境を超えた契約も容易になることが予想されます。

まとめ

ブロックチェーンの技術は、未だ新しく法的な観点からの整備は充分にはなされていないのが現状です。

法律は、社会の発展や状況に応じて、規定されていくものであるため、どうしても実務よりも遅れて整備されることになります。

そのため、ブロックチェーンに関するビジネスを展開する場合には、多くのビジネスチャンスがある反面、法律的なリスクを有していることを忘れてはなりません。

今日適法だったことも、明日には違法となる可能性もあるのです。

つまり、法律は、ブロックチェーン技術に関するビジネスの成功を左右する立場にあります。

法の規定を知り、ビジネスチャンスを見出すということが、新たな技術に関するビジネスにおいては最も重要な要素なのです。