飲食店がブロックチェーンを実装する未来

by AIGRAM

今回のコロナショックによって多くの業界がダメージを受けていますが、こと飲食店に関しては、とても特異な状況下におかれています。

本来であれば、時短営業を強いられ、お酒も提供できないことから、ほとんどのお店が廃業に追い込まれるような状況ですが、一部の大規模な店舗や家賃が極端に高い店舗を除いて、都市部の飲食店は感染防止協力金や雇用調整助成金などの支援により、通常営業時よりも利益を多く残しているお店も存在するのです。

本来の姿である飲食業界の大不況は行政の支援によって隠された状態になり、コロナショックを実感するのは、感染拡大が収束した後だと考えられます。

特に、これまでお酒を中心にしたビジネスモデルで利益を残してきた飲食店は今までのようには経営できない状態になり、テイクアウトや配達による在宅利用に消費を奪われてしまう状況はしばらく続いていくことでしょう。

さらに10年前から深刻化している食材費の高騰と人材不足から、普段のオペレーションの効率化を進めることが必要になり、IT技術をフル活用することが経営を安定さるための最低条件となっています。

これからはAI、ブロックチェーンをはじめとするDX化とは、切っても切り離せない状況になることは言うまでもなく、向こう数年は飲食業界にとって猛烈なスピードの変革を迫られることになるのは間違えない。

ここからはすでに始まっている飲食業界におけるブロックチェーン技術の実装の実態と問題点を取り上げていきます。

目次

「トークンエコノミー型グルメSNS」の出現

先日、株式会社GINKAN(ギンカン)より、ブロックチェーン技術を利用したグルメSNSプロジェクトの資金調達が4億円に達したと発表がありました。

この会社が運営している「シンクロライフ」というプラットフォームの機能から、飲食店においての「暗号通貨ポイントシステム」の実現が急加速していくことが期待されます。

これまで飲食店は、食べログをはじめとする口コミサイトをベースとした広告媒体とインスタグラムなどのSNSをそれぞれ別に運用して活用してきました。
しかし、「シンクロライフ」はこの2つが共存した媒体であり、さらに、これまでのQRコードや楽天ペイなどの決済機能ともリンクした新しい形のプラットフォームになっています。

また、今までと最も大きく違うのは、暗号通貨ポイントシステムが搭載されている点で、これは将来的に飲食店での「暗号通貨決済」を可能にすることを示しています。

これは日常的に行われる飲食店での決済において、非常に大きな展開だと考えられ、今後、暗号通貨決済の常態化に大きなはずみをつけることでしょう。

サプライチェーンのその先へ

食品加工、製造業でのブロックチェーン技術の利用は、この2年でかなり浸透してきており、生産地、加工工程、賞味期限などを記録するサプライチェーンとして定着をしつつあります。

しかし、その延長線上であるエンドユーザーに近い飲食店での食材の取り扱いにおいては、まだブロックチェーン技術が利用されていないのが現状です。

消費者にとって安心安全の食材を提供することも目的のひとつとされたサプライチェーンは、飲食店に生産物、製品が納められた時点でその意味合いを失ってしまい飲食店から消費者へのプロセスにおいては、今のところ機能を発揮していません。

飲食店の生産物、製品が渡った後、納品をされた中のどの生産物、製品を使用したのか?
いつ誰がどのような調理・加工を施したのか?
仕込んだ食材として保管され、賞味期限はいつで消費期限がいつなのか?

この点が現在のサプライチェーンではカバーできていないのです。

今後、この問題点に飲食業界の意識が及び、来店されたお客様へ、そして飲食店で独自に製造されるテイクアウト商品、通販での発送プロセスにブロックチェーン技術をどう利用していくかが課題となっていきます。

飲食店経営においても、料理の仕込み過ぎによる廃棄や食材・製品の過剰在庫によるロス、さらにはそれを管理するスタッフの作業効率化による人件費削減につながることは容易に想像がつきます。

深刻なノーショー問題の改善

最近になって、やっとメジャーな社会問題と認知されてきましたが、ノーショー問題(お客さんの無断キャンセルによる損害)は飲食店において、早急に解決すべき重要課題とされています。

2020年度の損害額は2000億円に上るとも言われています。

これまでTORETAやRetty などの予約台帳アプリの利用で顧客の実績を確認したり、キャンセル料の告知により無断キャンセルのリスクヘッジをとるなどしてきましたが、実際はキャンセル料を確実に徴収するところまでは至っていないのが実情です。

これから予約台帳・顧客名簿においてもブロックチェーン技術の利用が進み、決済機能とのリンクでキャンセル料徴収のルールの細分化や金額設定が進むことで、飲食店経営での大きな実害を減らすことが期待されています。

飲食業界が目指すべきブロックチェーンの利用法

SNSの急速な発達で、いまや一流料理人の調理方法やレシピは本人の解説付きで動画から学ぶことができ、入手困難な食材さえもすぐに探し当てることが可能になってきました。

今後さらに料理や飲み物だけで他店との差をつけることができない時代となっていくでしょう。

そこで飲食業界は、実業である来店されたお客様に満足していただくことを主軸におきつつ、その他でも収益の基盤となる柱を持つことが必要となってきます。

テイクアウト、配達、通販や食材キットの販売などを展開していくことはもうすでに行われていますが、ブロックチェーン技術を利用することにより収益を望むことも試していくべきでしょう。

ツイッターの創業者であるジャック・ドーシーの初ツイートをおもちゃに表示しNFT化して、その作品が高額で落札されたことは記憶に新しいですが、今後、あらゆるものがNFT化されていくことでしょう。

これを飲食業界にも置き換えて検討されるべき時代が来ているのです。

  • 料理のレシピ・盛り付け写真をNFT化して販売
  • メニュー開発段階での試作動画やデッサンをNFT化して販売
  • お店で提供されているワイン・日本酒の生産者と協力し、サプライチェーン情報の提示

このような手法が検討されていくべき時期にきています。

ただし、これらを実施して効果が得られる飲食店は、すでにお客様から素晴らしい評価を得ており、顧客満足度が高いお店に限られることが大前提となります。

「あの店のあの料理のレシピがNFTで販売された!」とすでに熱狂的なファンである顧客だけが反応することは間違えありません。
ブロックチェーン技術を活かしていくためには、やはり従来通りの顧客満足度を最大限に上げていく努力を続けていくことが必要となるでしょう。

参考文献

食いしん坊たちが愛するグルメアプリ シンクロライフ

実践! 店舗DX (日経ムック)