美容院・エステ業界における 最新のビジネス傾向 スタートアップ企業の動向

by AIGRAM

いまや、美容院の数は全国で約25万店舗もある(2019年現在)といわれています。コンビニの数が全チェーン店を合わせてせいぜい5万店舗で、信号機の数が20万基前後とされています。美容院は世の中に溢れすぎていて、すでに信号機の数よりも多くなっているのです。ポイントカードなどを作って常連客を惹きつけようとしても、同じような集客策は大半の美容院ですでに行われています。

他方、エステサロンの数は全国で5千店舗あまりと、美容院よりもはるかに少ないものの、エステを積極的に利用する顧客層は限られています。小さなパイの奪い合いになっていて、やはり過当競争となりつつあるのです。

このような美容・エステ業界における過当競争の中においても、独自のビジネスモデルを打ち出して生き残りを図ろうとするユニークな美容院・エステサロンが現れています。

目次

サブスクリプション型の美容室

サブスクリプションは、主にネットサービスなどで注目されているビジネスモデルであり、月に一定額を支払えば、サービスが使い放題になるものです。特にNetflixなどの動画配信サービスなどで主流になっていますし、近ごろではリアル店舗の世界でもサブスクリプションを導入する例が徐々に増えています。

従来から、トレーニングジムなどではサブスクリプションを導入していました。トレーニングは習慣化が難しいので、月々定額の会費を払いながらも通わなくなっている人がいるためです。それでもトレーニングジムが儲かっており、将来の売上の見込みが立つ点がサブスクリプションの強みです。

もし、トレーニングジムが「施設を利用するごとに料金を支払う」ことを主流にしていれば、トレーニングを習慣化する会員がほぼ増えないでしょうし、ジムの経営も不安定になります。「せっかく月会費を支払っているのだから、元を取らなければならない」と自分にプレッシャーをかけて習慣化し、何度も通う会員がいるからこそ、ジムに対して愛着も湧きますし、口コミが広がる源泉にもなるのです。

美容院やエステサロンなども「利用ごとに料金を支払う」しくみが当たり前になっていますが、特に女性は美容院に行く頻度が数ヶ月に一度程度である場合が多く、集客が安定しにくい弱点がありました。これをサブスクリプション中心のしくみに切り替えるだけでも、将来の売上の見込みが立って、経営が安定しやすくなりますし、もともと定期的に通っている常連客にとっては、サブスクリプションがお得な料金プランにもなりえます。
美容院サブスクリプションモデルのひとつとして注目されているのが「MEZON」です。専用のアプリをダウンロードしている顧客を対象として、2021年9月現在で900前後の美容院を対象にして、1週間につき3,300円で、シャンプー・ブロー・ヘアケアのメニューを回数制限なく利用することができます。特に髪の長い女性は日常的なヘアスタイリングに手間がかかる点で、悩みを持つ方が多く、自分で髪を洗ってドライヤーで乾かすだけでも数十分を要します。それらをすべてプロの美容師に任せて、ヘアスタイリングの負担から解放されることには大きなメリットがあります。また、定額で様々な美容院を試しながら、お気に入りを見つけることができるメリットも大きいでしょう。

一方、MEZONに契約している美容院は、他店舗のサービス内容と比較されてしまう点がデメリットとなりかねません。しかし、所属する美容師の腕や人柄などに自信があれば、ヘアスタイリングのサブスクリプションをきっかけに、カットやパーマの指名を勝ち取ることができるチャンスにもなりえます。カットやパーマなどの高単価サービスは、MEZONサブスクリプションの別枠として設定できますので、「使い放題」サービス自体が経営を圧迫するおそれもありません。

六本木・銀座・表参道・麻布十番の4店舗を構える「ジェットスター」も、シャンプーやブローに関するサブスクリプションサービスを設けています。月額25,300円からとやや高額ですし、ヘッドマッサージやヘアアレンジなどが別料金となりますが、都心の一等地に店舗を構える美容院に通い放題になる魅力は他に代えがたいものです。

男性専用の美容室サブスクリプション「GENTROOM」は、ヘアカット・眉カット・スカルプシャンプーがセットになったスタンダードコースで、月額14,300円で通い放題となります。さらに、ひげ剃りとフェイシャルケアも付いたGENTROOMコースや、顔から上を総合的にケアするエグゼクティブコースが用意されています。また、月3回以下しか通えなかった顧客を対象に割引サービスも設定していますので、良心的な価格プランとなっています。

サブスクリプション型のエステサロン

すでに、エステサロンのサブスクリプションも普及しつつあります。
月額38,000円から、エステティシャンによる充実した施術を1日1回という条件付きで無制限で受けられる「Salt.」は、料金がやや高額となりますが、エステを高頻度で積極的に使う方にとっては割安の料金設定となっており、人気を集めています。

また、フェイシャルケアとハンドケアに特化したパーツ美容専門のサブスクリプション「DanjoBi」も、月額6,800円から受けられる点でコストパフォーマンスが高く、やはり注目されているサービスです。ただし、使い放題となるのは事前に登録した1店舗のみとなりますので、注意が必要です。

最新のエステ機器を自分自身で使えるプランなら、さらに格安のサブスクリプションが用意されています。「じぶんdeエステ」は月額5,980円から、店舗予約無しで使い放題となる点で気軽に始められるプランです。プロによるカウンセリングは省略されていますが、自分の責任においてマイペースでセルフケアをしたい方にはおすすめできます。

同じセルフケアでも、完全個室制で他人の目を気にせず自己施術をしたいのであれば、「BODY ARCHI」というエステサブスクリプションもあります。月額10,000円から申し込めて、個室を確保するための事前予約が必要な点には注意しなければなりません。機器の使い方に関してはVTR解説がありますので、その点はセルフケアでも安心できます。

シェアサロン

フリーランスの美容師が、顧客に対してカットやブローなどを行う席だけを一時的に借りる「シェアサロン」という新たなビジネスモデルが徐々に広まっています。

すでに「AirSalon」や「GOTODAY SHAiRE SALON」といったサービスが動き始めています。こうしたシェアサロンに関するサブスクリプションでは、腕のある美容師が足りない美容院と、腕を振るう場がないフリーランス美容師とをマッチングさせる機能も果たしています。最短1時間から施術用の座席を一時的に借りることもできますし、月々定額の契約を行うこともできます。洗髪用のシャンプーやトリートメント、清潔なタオルの手配や、休息用のドリンクの用意などは店舗側が用意しますので、フリーランス美容師は接客や施術に集中できるメリットがあります。

独立したての美容師が、店舗を持つことには躊躇しながらも、自分の腕を振るう場がほしいという場合には重宝するでしょう。開業に関する初期費用を大幅に抑えられるため、新規参入のハードルも下がりますが、その代わりに集客は自分自身の責任で行わなければなりません。

現在は、東京都心に限定されていることがほとんどのシェアサロンですが、成功例が増えれば他の地域にも浸透していき、美容院・美容師・顧客の三面で相互にいい影響を及ぼし合うでしょう。

サマリー

美容院やエステサロンの世界は、新規参入が加速していて過当競争の様相を呈してきている。1店舗あたりの利益も減少していて、経営に苦しむところも少なくない。しかし、アプリなどを用いて顧客管理を効率化することによって、美容院やエステの世界でもサブスクリプションを導入して高い利益率を確保する例が増えている。また、複数のフリーランス美容師と美容室とを繋ぎ、ひとつの客席をシェアする例も都心を中心に広まっている。

参考文献

美容室のサブスクリプション導入で集客アップ!「サブスク」を解説

間時間をシャンプー・ブロー ・ヘアケアで売上UP

シャンプー&ブロー専門のサブスク

Gentroom/メンズのための月額会員制美容室/通い放題サービス

【理美容業界の動向】2020年注目のシェアサロンという選択肢。差別化とセット面稼働率UPが安定した経営につながる