【アパレル業界】これだけは知っておきたい3つのビジネスモデル

by AIGRAM

アパレル業界は世界的に、大きな岐路に立たされているといわれます。
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)やエシカル消費など、企業には地球環境や人権に配慮した活動が求められており、アパレル業界は今まさにビジネスモデルの変革を迫られているのです。

今回の記事では、工学博士を取得し株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴直彦が、アパレル業界の最新の動向を読み解くための3つのビジネスモデルを分かりやすく解説します。

目次

アパレル業界が抱える大きな問題

かつては、高級ブランドがコストを掛けて制作している衣服と、一般的な衣料品店やスーパーなどで出回っている衣服は、価格や品質の面で明確に二分されていました。一般的な衣服は、どうしても「安かろう、悪かろう」で、耐久性が比較的弱く、デザインも平凡なものが多かったのです。

しかし、ユニクロ(ファーストリテイリング)や、ZARA、H&Mなど、いわゆる「ファストファッション」メーカーの台頭により、安価で高品質で、しかもデザインも洗練された洋服が大量に出回るようになったのです。とはいえ、その裏には発展途上国で人々の労働力が安価で酷使されている実態があります。2013年にバングラデシュの首都ダッカ近郊で発生したビル崩落事故をきっかけに、その過酷な労働環境が世界的に明るみに出ました。

その一方、定価販売が当たり前だった高級ブランドがアウトレットモールで出店する例も増えており、わずかな不具合がある品物や型落ち品が割引価格で流通するようになっています。ファストファッションと高級ブランドとで、アパレル製品の品質や価格が徐々に近づいてきているのです。とはいえ、高級ブランドの中にはその希少性や高価格を無理に維持しようとして、在庫のあぶれた自社製品を陰で大量に廃棄している実態もあります。2018年に発覚したバーバリーによる大量焼却処分事件では、同社が世界的な批判を浴びましたが、同様の処分は高級ブランドであれば多かれ少なかれ陰で行われているとも指摘されます。

このような「地球環境の持続可能性に資する目標(SDGsなど)」に反する面も見られる、アパレル業界の抱える社会課題を解決したり、多様化する衣料品消費者の需要に的確にこたえたりするための新しいビジネスモデルが模索され、一部は既に実行に移されています。

そこでここではアパレル業界の最新の動向を読み解くための3つのビジネスモデルを解説していきます。

ビジネスモデル①D2C(Direct to Consumer)

D2C」とは、Direct to Consumerの略称で、メーカーが一般消費者に対して、直接商品を販売することを可能にした仕組みをいいます。卸業者や衣料品店などの中間業者を通すプロセスを排したことで、消費者はより安価で商品を購入できますし、メーカーはより高い利益率を確保できるようになったのです。

D2Cの成功例1『Warby Parker』

D2Cの成功例として有名なのが、2010年にアメリカで創業されたメガネメーカーの『Warby Parker』です。最初はネットショップのみで、展開する商品も20種類前後に抑えていました。それでも、中間マージンを省略してリーズナブルな価格を実現することができたおかげで、若者を中心に支持が広がったのです。

D2Cの成功例2『Everlane』

また、同じD2Cでも、アメリカの新興アパレルメーカー『Everlane』は、衣料品の製造コストを消費者に公開することで、製造プロセスの透明性を重視しています。薄利多売するために、製造・流通・販売のどこかで無理なコストカットをしておらず、品質と価格のバランスを保っている事実を示すことで、顧客からの信頼を得ているのです。「原価は公表しない」という業界の常識を打ち崩す、画期的なビジネスモデルをEverlaneは採用しており、誰かの生活を犠牲にしておらず、倫理的に適正に作られた商品を選んで購入しようとする「エシカル消費」のトレンドにも合致しています。

ビジネスモデル②SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)

D2Cに似たビジネスモデルに、SPASpecialty store retailer of Private label Apparel)があります。日本語では「製造小売」と訳されており、ユニクロやZARAなどのファストファッションが積極的に採り入れてきたビジネスモデルです。つまりは、衣料品の企画から製造・流通・販売までを、一社が一貫して行うことです。

SPAは、最新の流行を採り入れた、品質の良い衣料品を安く大量に流通させることに成功し、アパレル業界で一時代を築きました。しかし、自社のチェーン店舗を各地に多数抱えることが前提のビジネスモデルであり、運営のための莫大な維持費を要します。そのコスト分は、商品価格に上乗せされたり、メーカーの企業努力で薄利多売することにして乗り切ってきました。

しかも、SPAではマーケティング視点を重視するあまり、どのファストファッションメーカーも似たような没個性の無難なデザインとなりがちで、結局は価格を割引しなければ他社と差別化することが難しくなったのです。利益幅が少なくなったしわ寄せは、発展途上国の製造部門に響いてきて、労働環境のさらなる悪化を引き起こしたのです。

その一方で、D2Cは多数のチェーン店舗を抱えることを前提にしていません。1店舗ないし少数店舗、あるいはネットショップのみで、ひとりひとりの顧客とより密接に向き合う姿勢を重視します。それで、各店舗に寄せられた要望やクレームが、直接的に製造部門に吸い上げられて、商品の改善や新製品の開発などに確実に生かせるサイクルが強化されていくのです。

多様な種類の衣料品を大量生産・大量販売するファストファッションメーカーと異なり、D2Cのビジネスでは、商品の種類を絞りこんで少量限定生産することが一般的です。

開業資金を安く抑えられて、参入障壁が著しく低くなったD2Cビジネスモデルによって、多様なジャンルのアパレル部門が、顧客と良好な関係を築きながら、満足度の高い商品を多数、世に送っています。

ビジネスモデル③リサイクルプロジェクト

ファストファッションメーカーが大量生産した服の売れ残りは、無理に再販するよりも、すべて廃棄したほうが利益を出しやすいという共通認識が世界的に浸透して久しいです。しかし、廃棄を前提としたビジネスモデルは、地球環境のリソースを必要以上に消耗させるおそれが高く、もはや「持続可能性」という現代的トレンドに合致しているとはいえません。

とはいえ、衣料品のリサイクルは、なかなか進みません。ファッション性や希少性の高い商品であれば「古着」としてファッション愛好家の間で高値で取引されることもあります。しかし、何者が着ていたかわからない一般的な使用済み衣料品を着用することには、抵抗をおぼえる人が多いのです。リサイクルショップやネットフリマなどで使用済み衣料品をわざわざ買おうとする取引例は、頻繁に買い換える必要がある子供用衣料品を除き、決して多くありません。

そこで、不用品の衣服から繊維を取り出して再生し、使用感のない新品同様の衣料品に蘇らせるリサイクルプロジェクトが注目されています。

リサイクルプロジェクトの成功例『BRING』

たとえば、新興の衣料品ネットショップ「BRING」は、自社で衣料品を販売するだけでなく、不要となった衣服から繊維を再生し、自社内でリサイクルするだけでなく、再生繊維を他のアパレルメーカーに卸したりもしています。

BRINGが最初に手がけたのは、使用済みのポリエステル衣料から繊維を取り出し、再生ポリエステルを製造する技術です。現在では羊毛製の衣料品も回収し、再生ウールを製造して新たな衣料品を販売する取り組みも行っています。さらには、今までは再生が難しかった素材もリサイクルさせ、自家用車のシートカバーなどに用いる再生繊維を製造したり、製鉄所などと連携し、「コークス炉化学原料化法」という手法によって、化学繊維をリサイクルさせる取り組みを進めたりもしています。

とりあえず安い物を買って、1~2年で処分する、流行の追いかけや使い捨てを前提にした消費活動は、次世代には眉をひそめられるようになるのかもしれません。

サマリー

大量生産・薄利多売を吹きに世界を席巻したファストファッションメーカーが、前世代の勝者となっていたアパレル業界は、「持続可能な社会の実現」という要請を前にして、大きな業態転換を余儀なくされている。店舗を通じて消費者とメーカーを直接的に繋ぐD2Cでは、消費者の要望に的確に応えた製品が大切に販売される「スローファッション」が大きなムーブメントになっている。また、使用済みの衣料品が繊維からリサイクルされるしくみも確立されつつある。

おわりに

今回は、アパレル業界の最新の動向を読み解くための3つのビジネスモデルについて解説しました。

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参考文献

2019年、アパレル業界を席巻するビジネスモデル「D2C」。成功企業から見たその強みとは?

服から服をつく