【2022年度最新】ホテル業界へのAI(人工知能)の導入事例4選

by AIGRAM

AI人工知能)と聞くと、iPhoneに搭載されているSiriやお掃除ロボットのルンバ、Googleの検索エンジンを思い浮かべる人は多いでしょう。
しかしそれだけにとどまらず、今やAIは飲食業界や美容業界、フィットネス業界、アパレル業界まで、ありとあらゆる業界で導入が進んでいます。

そして、それはホテル業界も例外ではありません。
新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたホテルの中には、AIの力を使って経営の立て直しに取り組んでいる企業も多く存在します。

今回の記事では、工学博士を取得し、株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴 直彦が、ホテル業界へのAIの活用事例を4つ厳選し分かりやすく解説します。

目次

①宿泊料金のダイナミックプライシング

お盆や大型連休など、宿泊需要が高まって満室が予想される時期には、宿泊料金を値上げしたり、閑散期には料金を値下げして宿泊客を誘引しようとする動きは、多くのホテル・旅館が昔から行ってきた集客施策です。

このような価格コントロールを、AIによって自動的かつ適切に行おうとするのが、ダイナミックプライシングの仕組みです。
過去に蓄積された宿泊予約履歴から、客室の階級ごと、時期・曜日ごとに、宿泊客から敬遠されない価格帯で、かつホテル・旅館にとっても十分な利益を出せる損益分岐点を自動的に探り、客室単価(宿泊料金)を定めます。場合によっては、ホテル・旅館周辺地域の天気予報やイベント開催情報などとも連携させた需要予測も加味させることができます。

さらには、AIによって可能となった複雑な計算で、航空料金や特急料金、アミューズメント施設や買い物にかかる代金などと連動させたセット料金を設定することもできるでしょう。

ただし、あまりにも細かく価格設定を変更していると、かえって宿泊希望者からの信頼を損ねてしまうおそれがあります。ダイナミックプライシングを導入するにあたっては、ビッグデータを活かした精度の高い需要予測と、安定的な値付けとのバランスに気をつけなければなりません。

②無人ホテルの実現

すでに、宿泊予約の手続きは、予約サイトなどを用いれば決済機能も含めて自動化されていますし、一部のホテルでは、フロント機能や手荷物の運搬、客室や共用部分の清掃などをロボットが一手に担っているところもあります。たとえば、2015年に長崎・ハウステンボスから始まった『変なホテル』では、ロボットが前面に出て宿泊客に対応し、人間のスタッフはそのバックアップ役に回っています。

もし、AIをフル活用すれば、チェックインからチェックアウトまでをすべて機械化、無人化させることも、技術的には十分可能となっている状況です。

特に、外国人宿泊客への対応では、むしろ無人ホテルのほうが適しているともいえます。すでに、AIを使った多言語対応の自動翻訳ツールが実用化されています。そこで、フロント係のロボットに自動翻訳機能を組み込むことで、宿泊客は母国語でスムーズにコミュニケーションをとることができるのです。さらに、AIで裏付けられたチャットボットとも組み合わせれば、外国人宿泊客からの様々な問い合わせや要望にも、ロボットが多言語で対応することが可能となるでしょう。

チャットボットは、AIの機械学習によって、宿泊客のどの局面で、どのような問い合わせが多いのかを統計的に把握することができますし、どのような回答をすれば質問者の満足を得られるかも集計しています。よって、ホテル側が用意していないQ&Aでも、いずれ自動的に出力できるようになる場合があります。

そうして、チャットボットが蓄積させたQ&Aを、ホテル・旅館の公式サイト上にも掲載させて、見込み客の疑問や不安にも事前に答えられる態勢を整えることも技術的に可能です。Q&A集を充実させるほど、見込み客の不安が解消され、宿泊予約のコンバージョンに繋がる可能性が引き上がることもわかっています。

もっとも、ホテル宿泊客の中には、客室や食事の提供だけでなく、スタッフによる一連の充実したサービスに期待している人もいます。

たとえば、価格帯の安い客室の宿泊客については自動化し、スイートルームなど富裕層の宿泊客に対して集中的にヒューマンリソースを割いておもてなしをするなど、人材を効率的に配置する方向でAIを活かすこともできるでしょう。

③膨大なビッグデータを総合したマーケティング分析

旅行者に対して、ホテル・旅館の空室情報を総合的に提供するオンライン宿泊予約プラットフォームは、宿泊客の動向に関する様々なデータを膨大に蓄積させています。こうしたビッグデータやその分析結果を、各ホテル・旅館に提供することによって、将来の集客にも活かすこともできます。

自社だけでなく、同一の地域内で競合する他社の宿泊施設における顧客の動向まで捉えることができるため、より客観的に自社の強みと弱みを把握して、サービス品質の向上を図ることも可能となるでしょう。AIによるビッグデータ分析では、人間では思い込みや見落としによって従来は掴むことができなかった事実まで、新たに掴むことができるのです。

オンライン宿泊予約プラットフォームは、個々のホテル・旅館が存在し、それぞれの経営努力を怠らないからこそ成り立っています。プラットフォームが自動的に収集しているサイト訪問者のビッグデータは、プラットフォーム内のみで独占されるべきではなく、あらゆるホテル・旅館業界が共有できる公共的なデータとして活かされるのが本分といえるでしょう。

④ディズニーワールドの「MagicBand」

米ディズニーワールドが、ゲスト向けに提供している特製のリストバンド「MagicBand」には、専用のセンサーチップが内蔵されています。このMagicBand ひとつで、ゲストは宿泊施設のチェックインや客室ドアの解錠、入場ゲートの通過、アトラクションの予約、食事の購入まで、ディズニーワールド内でも様々な行動を実現できます。その代わりに、ディズニーワールド内で行われた様々なゲストの行動をビッグデータとして総合的に把握し、次なるサービス向上に活かすことができるのです。この「MagicBand」を本格導入するまでに、ディズニーワールドが約1,000億円の先行投資をしたのは、ビッグデータにそれだけ莫大な潜在価値があると見込んでのことでしょう。

この施策を応用すれば、ひとつの観光地で、旅行客の様々な購買・入場行動などを、すべて専用のウェアラブルデバイスで実行できるようにすることによって、同様のビッグデータを収集できるようになります。

実際、兵庫県の城崎温泉街でも、SuicaやPASMOなどのICカードや、スマートフォンなどに内蔵されたICチップへ、専用のデジタル外湯券(ゆめぱ)を発行し、そのデジタルマネーを城崎内の飲食店やおみやげ屋などでも使えるようにし、温泉客のビッグデータを集積させています。

ゆめぱのデータをAIに分析させることによって、どの曜日のどの時間帯に、どんな客層の来訪者が多いのか、どの施設での滞在時間が長いのか、などの動向を客観的に掴むことができますし、それを将来の集客施策や新たな街づくりに活かすことも可能となります。

サマリー

再び旅行客が増加し、国境の往来も盛んになるであろうアフターコロナの時代を見据えて、ホテル・旅行業界ではAIによるビッグデータ分析によって、効果的な集客やサービス向上を図ろうとしている。宿泊予約から、チェックイン、客室案内、問い合わせ対応、チェックアウト、清掃に至るまで、ホテル・旅館の運営業務は多岐にわたるが、これらを総合的にAIやロボティクスがこなす「スマートホテル」や「トラベルテック」の実用化や普及が期待されている。

おわりに

今回は、ホテル業界へのAIの活用事例を4つ厳選し解説しました。

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参考文献

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【日本初】「トラベルテックマップ2020」旅行市場における最新技術活用の新サービスを構造的に可視化

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創業63年、箱根の老舗ホテルが人工知能を導入した理由

IoTとビッグデータで何ができるか--世界の活用事例10選 - (page 2)

ビッグデータ:ビッグデータ活用事例(城崎温泉の「ゆめぱ」)