【徹底調査!】アパレル業界におけるAI・人工知能活用3選

by AIGRAM

AI、人工知能、機械学習。
これらの革新的な技術は、あらゆる産業と業界構造までも変えてしまいました。

このAIの登場によって変わったのは、インターネットやテクノロジー業界だけではありません。

あなたの着ている"服"。
つまり私たちの生活に密着するアパレル業界までもが、AIの活用によってさらなる変革を遂げているのです。

今回の記事では、工学博士を取得し株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴直彦が、アパレル業界におけるAI・人工知能の活用事例3選を分かりやすく解説します。

目次

アパレル業界の問題点

アパレル業界は、全体的に苦境にあえいでいます。ZARAやH&M、ユニクロ(ファーストリテイリング)に代表される、大量生産・大量消費・薄利多売を前提とした「ファストファッション」においては、そのビジネスモデルで成功できる業者がごく少数に限られます。

「良い服を安く売る」ことは、大資本に裏付けられた経営的に余裕のある企業しか満足に実現できません。トレンドを常に追いかけて最新のデザインを商品づくりに活かすにも、多大な先行投資を行う経営努力が前提です。そうでない企業がマネをしても無理が生じて、たちまち経営危機に陥るリスクを抱えます。

アパレル業界におけるAI・人工知能活用3選

これから大半のアパレル企業に求められるべきは、画一的なデザインの服を大量生産するのでなく、顧客の個別の好みや、世間の需要に応じた服を、AIの力を借りて低コストでオーダーメイドする技術です。このほかにも、様々な場面でアパレル業界におけるAIの応用可能性が潜んでいます。

ここからは、アパレル業界の常識を脱却し、顧客満足度と利益率を引き上げるための、AIないし顧客ビッグデータの応用例についてご紹介しています。

①画像解析による流行予測

画像解析の分野に、ビッグデータ分析が可能なAIが導入されてから、その精度は飛躍的に上昇しています。たとえば、猫が写っている画像を大量に読み込ませれば、パターン認識によって、新たに読み込んだ画像でも猫が写っているかどうかを即座に判別できます。近ごろは、どんな姿勢の猫が写っているか、何をしている様子だと推測できるか、まで詳細に解析できるまでになっています。

この画像解析を応用し、近い将来にどのようなデザインや色彩の服が流行しそうかを、AIに予測させる動きも始まっています。たとえば、「現在流行している服」「売れ残っている服」「1年前に流行した服」「1年前に売れ残った服」「2年前に流行した服」「2年前に売れ残った服」の画像をそれぞれ大量に読み込ませれば、ビッグデータ分析によって「1年後に流行しそうな服」をAIに出力させることもできます。

今までは、流行しそうな服を何パターンも作成して、予測を外して在庫の山を作ってしまうことも少なくありませんでした。AIによる流行予測の精度が上がれば、無駄な在庫を抱えるリスクを最小限に抑えることもできるでしょう。

服飾デザインのプロでも見落としてしまいそうな流行服の共通点も、充実した質と量のビッグデータが揃っていれば、AIによって解析し、可視化させることが十分に可能なのです。

②AIによる自動採寸システム

紳士服販売の大手であるコナカが展開している新業態「SUIT SELECT(スーツセレクト)」では、AIによる自動採寸を実現する専用アプリを使って、オーダーメイドのスーツを最短で10日後に納品できるサービス、「AI SPEED ORDER」を2020年から実用化させています。2021年からは、同様のオーダーメイドをワイシャツでも実現する「AI SPEED ORDER SHIRT」も始まりました。

AI自動採寸アプリをインストールしたスマートフォンで、お客様の姿を指定の4方向から撮影した上で、アプリが提示したいくつかの質問に回答するだけで、採寸作業は完了します。巻き尺などでの実寸は一切必要ありませんので、来店なしの完全オンラインでオーダーメイドでの発注が可能となるのです。実店舗がない地域でもオーダーメイドが可能となるのが、このサービスの最大の強みといえるでしょう。

また、10種類の色・柄・生地を選択できる点でも、希望に近いオーダーメイドを実現できますし、従来型の同じようなオーダーメイドサービスでは達成できない低価格で提供されていますので、顧客満足度が引き上がります。これらも、オンラインやAIをフル活用したことで、出店コストや人件費を大幅に節減できたことによる効果といえます。

実店舗販売では、Web同様に非購入者も含めた顧客行動の把握が求められており、それを実現する手段として注目されているのがAI技術を活用した映像ソリューション「FieldAnalyst」です。入店する顧客数を属性別に把握できるうえ、IoT化してBIツールなどと連携することでさらなる成果が期待されています。

③店内での客の動きを捕捉し、充実したサービスに活かす

顧客の好みや世間全体のトレンドを把握するため、伝統的に用いられてきたのがPOSデータです。商品に付いているバーコードと紐付いており、「いつ、どのような顧客層の人々が、どんな商品を購入している傾向が強いのか」を分析することができます。しかし、POSデータはあくまでも顧客の購入履歴しか補足できず、「興味はあったが、結局購入に至らなかった商品」や、「そもそも目にもとまらなかった商品」については、分析の対象外でした。

その点、オンラインショップであれば、訪問者がどのページを何秒見たのか、どのリンクからどのページへ移ったのか、どのページからショップ外に離脱したのか、などの行動履歴をすべてビッグデータとして蓄積し、AIによる分析対象にできます。しかし、同じような顧客の行動履歴を、実店舗で追いかけることは非常に困難でした。

このように、POSデータの分析から漏れていた、購入前の顧客行動までAIで追跡し、分析対象とすることで、さらなるサービス向上に活かそうとするアパレル業界の動きが既に始まっています。

実店舗での顧客の行動を追跡するAIツールのひとつに、NEC(日本電気株式会社)などが開発・提供している「FieldAnalyst」があります。まずは、店内に設置された防犯カメラなどと連動させた画像認識によって、顧客の性別や年齢層などを推測する技術をもとにして、店舗来客数を自動的に計測し、客層ごとに分類することができます。そうして、非購入者への対策も含めてマーケティング施策を支える基礎データとして活用することも容易となります。個人を特定しない属性のみを拾い上げるため、プライバシーにも配慮されている情報収集方法です。

「FieldAnalyst」によって、時期ごと、曜日ごと、時間帯ごとの来客数を客観的に計測できれば、近い将来の来客予測も可能ですし、適切なタイミングで割引セールなどを実施することもできます。繁忙が予測されるタイミングに備えて、スタッフ増員の準備も余裕をもって行えるようになります。

この分析をさらに進めれば、どんな服を着ている顧客が、新たにどのような服を購入したのか(興味を持ったのか)を解析できるようになるでしょう。画像解析の精度が上がれば、顧客属性に「ファッション傾向」を加えられる余地があるのです。

また、どの客層の人が、どの棚の前で立ち止まっていたかも解析できますので、そのデータを店内レイアウトの変更に活かすことも可能となります。また、「FieldAnalyst」を広告用のデジタルサイネージとも連動させて、客層の変化に応じて、デジタルサイネージに表示させる訴求内容を、できるだけ購買効果があがる方向で自動的に変更させることもできます。

また、デジタルサイネージに小型カメラを設置すれば、サイネージの前に立っている人の属性を割り出し、その個人が関心を持ちそうな服をAIが自動的にリコメンドさせることも難しい施策ではなくなりました。

昔と違い、多様な衣服が十分に行きわたっている現代人に対して、その好みを推測し、新たな服を提案することは、プロのアパレル店員にとっても決して簡単ではありません。しかし、AIの力を借りれば、顧客の潜在的な購買意欲を新たに刺激して、売上アップに繋げることもできるのです。

サマリー

多種多様なデザインや価格帯の服が出回り、誰もが必要十分な服を持っている現代において、アパレル業界が顧客に対して、新たな服を提案、販売することは決して容易ではない。ファッションの嗜好が人それぞれ、多様化しているからだ。しかし、AIを用いたビッグデータの解析によって、人間の力では割り出せない隠れた好みや需要を割り出し、的確な提案ができるようになる可能性が期待されている。

まとめ

今回は、アパレル業界におけるAI・人工知能の活用事例3選について解説しました。

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参考文献

アパレル業のAI活用事例5選「個別クーポンで収益が7割増加」ほか

アパレル・ファッション業界でもAI・人工知能の活用が進む

AIはトレンドか。アパレル業界のAI活用

アパレル界でAIはどう活用できるのか【利益率が上がる理由とは】

アパレル業界におけるAI、IoT活用のすすめ ~店舗における顧客の行動把握を実現~