スマートコントラクトとは?ブロックチェーン上で契約を自動で実行する技術を、分かりやすく解説。

by AIGRAM

スマートコントラクトとは、コンピュータプログラムを使って契約を自動化するシステムであり、イーサリアムで実現した技術です。この記事では、スマートコントラクトの仕組みや事例、メリット・デメリットについて分かりやすく解説しています。

「ブロックチェーンの世界で頻繁に出てくる、スマートコントラクトって何?」
「スマートコントラクトは具体的に、どんなものに利用されているの?」
そんな悩みを抱えていませんか。
確かに、スマートコントラクトは各国政府をはじめ多くの企業も注目している、ブロックチェーン関連の技術ですので、一体どんなものなのか知りたいですよね。
スマートコントラクトは、金融・不動産・エンタメなどさまざまな業界が参入しており、コスト削減や業務効率化だけにとどまらず、これまでになかった全く新しいサービスが生まれるなど、未知の可能性を秘めています。
この記事では、スマートコントラクトの仕組みや事例、そしてメリット・デメリットについて詳しく解説します。

目次

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、コンピュータプログラムを使って契約を自動化するシステムです。
このスマートとは「自動的に実行される」を意味し、コントラクトは「契約」と訳されます。
ネットワーク上で発生したトランザクションや、取り込まれた外部データをトリガーとして、あらかじめ組まれたプログラムに従い契約が自動で実行される技術です。
スマートコントラクトの概念は、1994年に暗号学者のニック・スザボ氏が考案しました。
すでに30年前から、スマートコントラクトの概念が提唱されていたのですが、2013年になってヴィタリック・ブリテン氏がイーサリアム(Ethereum/ETC)のブロックチェーン上で実現。
ここから、世の中に広く認知されるようになったのです。
なお、イーサリアム上ではそのまま「スマートコントラクト」と呼ばれていますが、ブロックチェーンによっては違う名称がついているので注意が必要です。

スマートコントラクトの仕組み

スマートコントラクトは、以下のような流れで動作します。

  1. 契約内容の事前定義
  2. イベントの発生
  3. 契約の履行、価値の移転
  4. 決済処理

人間が上記の1)を行うと、プログラムに沿って2)〜4)が自動で実行される仕組みです。

スマートコントラクトの考案者であるニック・スザボ氏は、このスマートコントラクトの流れを自動販売機に例えて説明しています。
自動販売機では、お金を投入して欲しい商品のボタンを押すと、売買契約が成立して自動で商品が出てきますよね。
このような、設定されたルールに従って契約が実行されるという一連の流れを、プログラムで自動化されるという仕組みがスマートコントラクトです。

ブロックチェーン上で動作するスマートコントラクトは、分散性や改ざん耐久性といった特性を受け継いでいますので、信頼性が高く透明性のあるシステムを構築できます。
そのためスマートコントラクトは、中央集権からの脱却を目的として作られたブロックチェーンの思想を実現するための、最適な概念であるといえるでしょう。
ビットコインの次に誕生したイーサリアムにスマートコントラクトが実装されたのは、歴史的必然といっても過言ではありません。

スマートコントラクトのメリット

次に、スマートコントラクトの具体的なメリットについて、見ていきましょう。
スマートコントラクトには、透明性や信頼性が高く、取引にかかる時間・コストを削減できること、そして普及が進む電子契約への対応がスムーズであるという利点があります。

透明性・信頼性の高さ

スマートコントラクトの1つ目のメリットは、透明性や信頼性の高さです。
通常の契約や取引の場合、第三者による仲介によって信頼を担保しますが、スマートコントラクトを使えば仲介者が不要になります。
取引では、事前に定義された条件が満たされると必ずプログラムに記述された契約が履行され、同時に決済までも処理されます。
そして、記述された内容は誰でも見られますので、透明性が保たれているのです。
また、スマートコントラクトはブロックチェーン上で動作しますので、高いセキュリティも確保されます。
さらに、スマートコントラクトの契約ではネットワーク上の全てのコンピュータにデータが記録されるため、どのコンピュータからでも内容の確認が可能です。
この情報共有によって不正やデータの改ざんも防げるため、信頼性も高まります。

取引にかかる時間・コストの削減

2つ目のメリットは、取引にかかる時間やコストを削減できることです。
スマートコントラクトの取引では、第三者の仲介がなくても自動で契約を実行できます。
複数の関係者が絡む非常に複雑な契約でも、あらかじめプログラムに記述しておけばスピーディに完結できるため、取引にかかる時間を大幅に短縮できるのです。
これは、売掛金の回収で頭を悩ませている、企業担当者やフリーランスにとっては朗報です。
納品しても取引相手がなかなか支払いをしてくれないケースなど、その回収コストは馬鹿になりません。
ところが、スマートコントラクトで契約を交わしていれば、あらかじめ定義されたかたちで納品を済ませさえすれば、次の瞬間には支払いが自動で履行されるようになるのです。
また、仲介者に払っていた手数料も支払わずに済むため、取引にかかるコストも大幅にカットできます。

電子契約への対応

3つ目のメリットは、電子契約への対応がスムーズに進むという点です。
新型コロナウイルス感染症の拡大でリモートワークが推進された際には「出社しないと印鑑が押せず契約ができない」といった、業務上の問題点が浮き彫りとなりました。
そのため、今ではさまざまな企業が取引の電子化を進めています。
しかし、現在使われている電子契約サービスは、あくまでも当事者同士による合意の確認に利用されているだけであり、契約の履行まではカバーしていません。
スマートコントラクトによって締結された電子契約であれば、内容の合意のみならず契約の履行や決済までを電子化し、かつ一連の流れを自動化できるのです。
スマートコントラクトはこのように、取引の電子化推進にとって非常に有用な技術となります。

スマートコントラクトのデメリット

スマートコントラクトの有用性を紹介しましたが、一方でいくつかの重要な問題点もあります。
それは、プログラムの脆弱性やプライバシーの問題、さらに法的環境といった懸念です。

プログラム内の脆弱性

1つ目の問題点は、スマートコントラクトにおけるプログラム内の脆弱性です。
スマートコントラクトで構築した契約のプログラムは、一度実行してしまうと途中での変更が非常に困難です。
したがって、プログラムのバグが原因でトラブルが発生しても、修正や契約中止など、柔軟に対応することはできません。
バグを突いたハッキングが発生し、情報が悪用されてしまうという可能性もあります。
また、スマートコントラクトに使われるプログラミング言語は、今まで使われてきたものと大きく異なるため、開発者は従来の知見を応用できません。
さらに、スマートコントラクトの透明性によってプログラムのコードが丸見えのため、ハッキングを企む攻撃者にとっては解析が容易です。
実際に、2016年のTHE DAO事件ではスマートコントラクトの脆弱性を突かれ、約52億円相当にもなる暗号通貨が盗まれてしまいました。
こういった取り返しの付かない事態を防ぐためには、プログラムを実行する前にバグが無いかをしっかりと検証する必要があるのです。

プライバシーの問題

2つ目は、スマートコントラクト利用者のプライバシーをどう保護するか、という問題です。
スマートコントラクトは透明性の高さがメリットですが、契約上の情報が簡単に閲覧できるため、個人の特定につながる恐れがあるからです。
ブロックチェーンを利用する人は、個人情報が紐付かないアドレス(識別子、ID)を使って取引しますので、一定の匿名性は保たれています。
ところが、スマートコントラクト上の情報は誰でも閲覧できるため、特定のアドレスが関わる取引の履歴をたどれたり、他の取引との関連を知られてしまったりするなど、プライバシー漏洩の問題が指摘されているのです。

この問題を解決するために、さまざまなアプローチでプライバシー保護の方法が考案・開発されています。

  • 複数のトランザクションを混在させて追跡を困難にさせる
  • 暗号プロトコルを使って取引情報そのものを秘匿する
  • ブロックチェーンを拡張して取引を秘匿する

しかし、プライバシー保護の技術を売りにした一部のブロックチェーンが、マネーロンダリングなどの不正に悪用される可能性があると、世界的に問題になっています。
ブロックチェーンやスマートコントラクトが一般的に普及するためには、プライバシー保護と不正利用の抑制をどうやって両立していくのか、という課題に取り組む必要があるのです。

法的環境

3つ目の問題点は、スマートコントラクトに関する法的な環境が整っていないことです。
分散型プラットフォームであるブロックチェーンには中央管理者がいませんが、現在の法律は企業などの管理者がいる前提で制定されています。
したがって、個人情報保護などの法律の規制が、及ばない可能性があるのです。
また、何らかの理由で契約が取り消された際に、権利移転をなかったことにするという表現が、不可逆であるブロックチェーンでは難しいという課題もあります。
スマートコントラクトで資産を譲渡する契約を交わした後、1ヵ月後に取り消しとなった場合、契約内容の実行から取り消しまでの1ヵ月間の所有者について、法律では元の所有者のままですが、ブロックチェーンでは譲渡先が持っていたとして記録されることになります。
こういった諸問題について、現行法ではきちんと対応できないのです。

現在、総務省をはじめ、金融庁や経済産業省などの関連省庁が、それぞれ研究会などを実施して有識者と議論している段階であり、法的な整備はこれからでしょう。

スマートコントラクトの事例

ここからは、具体的なスマートコントラクトの事例について紹介しましょう。

DeFi(分散型金融)

DeFi(ディーファイ/Decentralized Finance)とは、スマートコントラクトを応用した分散型の金融システムです。
金融サービスを利用する際、従来は銀行や証券会社などによる仲介が必要でした。
DeFiではスマートコントラクトで契約が自動で実行されるため、そのような中央管理者が不要となり、ブロックチェーンを通して、取引相手と直接やり取りできます。
また、仲介手数料を支払う必要がなく、取引にかかるコストを大幅に削減できるのです。
さらにDeFiには、銀行口座を持てない人でも金融サービスを利用できるという利点があります。
金融サービスには銀行口座が必要ですが、世界には貧しく口座を持てない人が新興国を中心に17億人ほどいます。
一方で、彼らはスマホを持つ割合が多いためDeFiであれば利用でき、金融サービスの恩恵を受けられるのです。
なお、中央管理者がいない仮想通貨の分散型取引所は、別に「DEX」と呼びます。

不動産関連

スマートコントラクトは、不動産業界での活用も期待されています。
不動産の取引は非常に複雑で、登記や契約、名義の書き換えといった手続きがあります。
また、物件を売る人と買う人、それを仲介する不動産会社や融資先の金融機関、そして司法書士との間で、膨大な書類をやり取りしなければならず、非常に時間と労力がかかるのです。
しかし、スマートコントラクトを用いれば、人間が行っていた送金や契約書の発行、登記申込書の送付といった業務は全て自動化されるため、業務効率化やコスト削減ができます。
そして、契約データはブロックチェーンで分散化されるため、不正や改ざんは不可能となる上に、中央で管理する企業も不要です。
さらに、売り手や買い手といった契約に関係する人は、手元のデバイスで一連の内容をいつでも確認できます。
このように、不動産取引にスマートコントラクトを利用することで、手続きを簡略化しながら、仲介者抜きでも信用が担保された契約締結ができるようになると期待されています。

エンタメ・ゲーム

ゲーム業界でも、スマートコントラクトを活用したアプリが多数、開発されています。
例としてよく取り上げられるのが、最古のブロックチェーンゲームである「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」です。
ゲームでは、何種類もの猫を売買したり繁殖したりして、集めていきます。
登場する猫やアイテムはNFT(非代替性トークン/Non-Fungible Token)であり、マーケットプレイスで売買が可能
中には1,000万円以上で取引された猫も存在しますので、投資目的でプレイする人もいます。
また、猫の取引履歴はスマートコントラクトで記録されていますので、飼い主は何回変わっているのか、その際の金額はいくらだったのかといった情報を、誰でも見られるのです。

また、エンタメ業界においても、スマートコントラクトを用いて映像や音楽などの知的財産を保護しようとする動きが出ています。
日本ではエイベックスが子会社となる「エイベックス・テクノロジーズ株式会社」を設立し、ブロックチェーンを活用してデジタルコンテンツの権利を守るテクノロジー開発に乗り出しました。
このように、ゲームやエンタメにおいてもスマートコントラクトの活用には多くの可能性を秘めていると、非常に期待されています。

まとめ

今回は、スマートコントラクトの仕組みや事例、メリット・デメリットについて解説しました。
スマートコントラクトとは、コンピュータプログラムを使って契約を自動化するシステムであり、イーサリアムで実現した技術です。
透明性・信頼性が高く、取引にかかる時間・コストを削減でき、普及が進む電子契約への対応がスムーズであるというメリットがある一方で、プログラムの脆弱性やプライバシーの問題、さらに法的環境などの懸念があります。
既にDeFiやゲームで活用されていますが、今後は不動産などの取引への応用も期待されています。
人間の働き方を大きく変える、スマートコントラクトの今後の発展に、注目していきましょう。

参考文献

スマートコントラクトとは?利用するメリット・デメリット、活用事例も紹介

ブロックチェーンのスマート・コントラクトとは

スマートコントラクトとは何か? その仕組みや事例、実装への課題を解説

スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!

スマートコントラクトとは?仕組みやイーサリアム(ETH)との関係を解説!

ブロックチェーン上での契約する仕組み「スマートコントラクト」とは

スマートコントラクト−ブロックチェーンからなるプログラミングプラットフォーム

ブロックチェーンが不動産に与える影響5つと活用法2つ|課題とは

不動産業界で普及が待たれる“契約の民主化”スマートコントラクトとは

法律×ブロックチェーン|メリットと課題は?

弁護士が語るブロックチェーンやスマートコントラクトの日本における法律の課題とは