サイドチェーンとは?ブロックチェーンを拡張する技術の概要と、セカンドレイヤーとの違いを解説。

by AIGRAM

サイドチェーンとは、メインチェーンとは別にトランザクション処理を行うブロックチェーンです。この記事では、サイドチェーンの概要・特徴や作られた背景、セカンドレイヤーとの違い、そしてサイドチェーンの事例について分かりやすく解説しています。

「仮想通貨におけるサイドチェーンって、何?」
「セカンドレイヤーとサイドチェーンは、一体何が違うんだろう…」
そんな疑問をお持ちではありませんか。
確かに、仮想通貨の関連ワードを調べていくと、サイドチェーンとともにセカンドレイヤー(レイヤー2)という同じような概念が出てきますよね。
実は、サイドチェーンとセカンドレイヤーには、明確に違いがあります。
この記事では、サイドチェーンの特徴や作られた背景をはじめ、セカンドレイヤーとの違い、そしてサイドチェーンの事例について、詳しく解説します。

目次

サイドチェーンとは

サイドチェーンとは、メインチェーンとは別にブロックチェーンを構築して、トランザクションを処理する技術です。
現在、ビットコイン(Bitcoin/BTC)イーサリアム(Ethereum/ETH)といった主要なブロックチェーンでは、ユーザーの増加によって計算処理が集中し、決済スピードの低下や取引手数料の高騰などの「スケーラビリティ問題」が発生しています。
サイドチェーンは、処理を分離することでメインのブロックチェーンの負担を減らし、スケーラビリティ問題の解消を目指して作られたものなのです。

サイドチェーンが作られた背景とは

サイドチェーンが作られた一番大きな理由は、前述の通りスケーラビリティ問題の解消です。
拡張性が高いという特徴を持ち、時価総額2位のブロックチェーンとなるイーサリアムは、多くのユーザーによって以下のような用途で使われています。

ところが、イーサリアムのブロックに書き込める取引の量は上限があるため、ユーザーの増加によって取引量が拡大すると、取引遅延や手数料の増加などの問題が起こってしまうのです。
このスケーラビリティ問題は、2017年の仮想通貨バブル時において、ビットコインやイーサリアムの価格の推移が激しかった際、少しでも早く取引をしようとユーザーが殺到し、手数料が高騰したことで表面化しました。
また2020年にブームとなったDeFiは、そのほとんどがイーサリアムのブロックチェーンを使って構築されていたため、イーサリアムのスケーラビリティ問題は深刻化しています。

プラットフォームを利用する際の手数料が高くなってしまうと、小規模の取引が気軽にできず不便です。
この問題の解決策として、サイドチェーン技術が浮上しました。

セカンドレイヤーとの違い

サイドチェーンと同じように、スケーラビリティ問題を解決する技術として「セカンドレイヤー」があります。
その違いは、簡単に言うとオンチェーンかオフチェーンかということです。

セカンドレイヤーとは

セカンドレイヤーは、取引をオフチェーン、つまりブロックチェーン外部で処理します。
その後、結果のみをメインのチェーンに返すことで、そのパフォーマンスを向上させています。
これによってユーザーは、安価な取引手数料でブロックチェーンを利用できる上に、取引にかかる時間も大幅に短縮されるという恩恵も受けるのです。
一方で、途中の処理をメインチェーン外で行うため、取引の透明性が課題となります。
セカンドレイヤーの具体例としては、ビットコインの決済手段として「ライトニングネットワーク(Lightning network)」が挙げられます。
ビットコインはトランザクション処理の時間が20分ほどかかり、取引手数料も高くなってしまいますが、ライトニングネットワークを使えば、小規模な取引でもブロックチェーンの処理を詰まらせず、手数料も少額で済むようになります。
なお、親となるブロックチェーンをレイヤー1に見立てて、平行して構築された別の仕組みでトランザクションを処理することから、セカンドレイヤーは「レイヤー2」とも呼ばれています。

サイドチェーンとは

一方のサイドチェーンは、メインのブロックチェーンとは別のチェーンを利用して取引の処理をさせることで、メインチェーンの負荷を減らす仕組みです。
また後述しますが、メインチェーンにはない機能を付加したり、独自通貨の発行などを行うこともできます。
サイドチェーンを利用する場合は、まずメインチェーンにある仮想通貨をロックして使用できないようにします。
すると、サイドチェーン側で同額の仮想通貨を自由に行使できるという仕組みです。
再びメイン側で仮想通貨を使うためには、サイドチェーン側の資産をロックしなければなりません。
これを「双方向ペグ」と呼びます。

また、セカンドレイヤーは別の場所で取引した結果をブロックチェーンに返すため、本体からセキュリティを引き継ぎます。
したがって、理論上はメインのブロックチェーンが信頼できるものであれば、セカンドレイヤーも信用できるということになります。
一方で、サイドチェーンはトランザクション処理を承認するノードが違いますので、メインのブロックチェーンとはセキュリティが全く異なります。
つまり、サイドチェーンを利用するユーザーは、セカンドレイヤーの管理体制を信頼する必要があるのです。
このように、サイドチェーンはセカンドレイヤーとは全く異なる技術となります。

サイドチェーンの特徴

次に、サイドチェーンの特徴を見ていきましょう。

メインチェーンの機能を拡張できる

1つ目の特徴は、メインのブロックチェーンにある機能を拡張できることです。
メインのチェーンとは別でトランザクション処理するため、取引の時間短縮や手数料の軽減など、従来のコインでは実現不可能だった機能が実装できるようになります。
例えば、ビットコインは決済を目的としてつくられた仮想通貨ですので、契約を自動実行するスマートコントラクト機能は使えません。
しかしサイドチェーンを用いれば、ビットコインにスマートコントラクトを実装できます。
これらの機能は、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)によって実現されていますので、ビットコインにこだわる必要はないのではと思う方もおられるでしょう。
しかし、流動性が低いアルトコインと違い、サイドチェーンはビットコインのセキュリティの高さや信頼性が担保されているため、安心して利用できるというメリットがあります。

ハッキング被害の軽減

2つ目の特徴は、ハッキングの被害を軽減できるという点です。
サイドチェーンは、親となるブロックチェーンとは別に管理・運営されています。
そのため、ハッキングが発生してもサイドチェーンを切り離してしまえば、メインチェーンの被害を最小限に食い止められるのです。

イーサリアムでは2016年6月、新しい機能の脆弱性を突いた大規模なハッキングが発生しました。
後に「The DAO事件」と呼ばれるこの問題では、ハッキングによって当時のレートで約52億円もの資金が盗まれてしまったのです。
脆弱性のあった新機能は親のブロックチェーンに実装されていたため、対応に遅れが生じて被害が拡大しました。
この時、もし新機能がサイドチェーン上に実装されていれば、すぐに切り離すなどしてスピーディに対処できたでしょう。
このように、サイドチェーンはメインチェーンをハッキング被害から保護できるのです。

独自通貨をサイドチェーン上で発行できる

3つ目は、サイドチェーン上で独自の仮想通貨を発行できることです。
仮想通貨を発行する時は通常、新たにブロックチェーンを開発する必要があります。
しかし、サイドチェーンにはメインチェーンと互いにやり取りできる双方向ペグという機能があるため、新しいチェーンを作らずともトークンを発行できるのです。
また、ビットコインを用いて独自トークンを作る場合、従来の手法ではビットコインを誰も使えないアドレスに送るという処理(バーン)を経てから発行していました。
そのため、ビットコインから変換した独自トークンは、ビットコインには戻せなかったのです。
これを「一方向ペグ」と呼びます。
サイドチェーンは双方向ペグですので、変換したコインを再びビットコインに戻すことができます。

サイドチェーンの問題点

メインのブロックチェーンを機能拡張できるなど、メリットの多いサイドチェーンですが、いくつかの問題を抱えています。

安全性に不安がある

1つ目は、サイドチェーンは安全性に不安があるという点です。
サイドチェーンを利用する際は、メインチェーンとサイドチェーンの両方をマイニングする必要がありますが、どちらか一方にマイニングが偏った場合、安全性が低下してしまいます。
また、サイドチェーンのセキュリティに問題があると、ネットワーク全体のマイニングのうち半分以上を支配して、ブロックチェーンを不正に書き換えてしまう「51%攻撃」が起きる可能性もあります。
この問題の解決策としては、メインチェーンとサイドチェーンを同時にマイニングする「マージマイニング」という概念が検討されています。

マイニングの集中が起きる

2つ目の問題点は、マイニングの集中が起きてしまうことです。
前述のマージマイニングはマイニングの偏りを抑制できますが、一方で必要とする計算能力は高くなってしまいます。
すると、高度なコンピュータを保有する一部の企業などによってマイニングが独占されてしまい、報酬や影響力も独り占めにされかねません。
さらに、これらのマイナーによる51%攻撃のリスクも高まります。
現在、ビットコインやイーサリアムでは一部マイナーによるマイニングの寡占化が問題になっていますが、より高度な計算能力を必要とするサイドチェーンは、それをさらに加速させてしまう可能性があります。

サイドチェーンの事例

ここからは、サイドチェーンの事例を3つほど紹介しましょう。

Liquid(リキッド)

Liquid(リキッド)は、ビットコインのサイドチェーンとしてBlockstream社が開発した決済ネットワークです。
ネットワークには仮想通貨取引所をはじめ、トレーディングデスク・ブローカー、インフラサービス、ウォレット決済サービスなどの事業者が数十社ほど参加しています。
同社のCEOであるアダム・バック氏は、ビットコインのコンセンサスアルゴリズム「プルーフ・オブ・ワーク(POW)」で使われる「ハッシュキャッシュ」の考案者です。
リキッドのネットワーク上では、双方向ペグを利用してビットコイン裏付けトークンを発行できるとともに、ステーブルコインやゴールドに裏付けされた独自トークンの発行もできます。
実際に、テザー(USDT)やカナダドルにペッグしたトークンなどが発行されています。
また、トランザクションを秘匿化できるという機能を持ち、第三者が取引金額や資産の種類などを確認できないなど、プライバシーに配慮して設計されました。
さらに、リキッドは2分で決済が可能であり、20分以上かかるビットコインと比較して大幅な時間短縮を実現しています。
なお、Liquidネットワークでは、透明性が高く民主的なガバナンス体制が確立されています。

Rootstock(ルートストック)

2つ目に紹介するRootstock(ルートストック)も、ビットコインのサイドチェーンです。
ルートストックは、簡単に言うと「ビットコインの堅牢なセキュリティとイーサリアムの拡張性を併せ持つ技術」です。

知名度のあるビットコインは、ノードも分散されていて高い信頼性がありますが、決済しかできず応用性が低いという欠点があります。
そんなビットコインに、イーサリアムのような拡張性を持たせようと始まったのが、ルートストックプロジェクトです。
ルートストックは、ビットコインの欠点である決済時間の長さやスケーラビリティ、そして手数料の高騰といった問題が解決できます。
また、ルートストックにはスマートコントラクトが実装されているため、イーサリアムと互換性をもたせた分散型アプリケーション(dApps)を作成可能です。
マージマイニングもでき、ルートストックでのガス代として使用されるネイティブコイン「RBTC」とビットコインの両方を同時にマイニングできます。
さらに、高速なトランザクション処理システムを用いたルートストックでは、ブロック生成時間を10秒前後まで短縮してスピーディな送金を実現しており、スケーラビリティ問題の解消が期待されています。

Lisk(リスク)

リスク(Lisk/LSK)とは、dAppsの構築を目的としたプラットフォームです。
ブロックチェーン上では仮想通貨「LSK」が流通しており、スマートコントラクトの実装や、開発ではポピュラーなプログラミング言語であるJavaスクリプトが採用されているなどの特徴を持ちます。
これらの機能とともに、サイドチェーンの使用も予定されているのです。
実現すれば、メインチェーンのセキュリティが強化され、取引処理の能力も向上します。
また、メインチェーンの仕様変更が不要なため、アプリケーションに新しい機能を簡単に実装できるなど、開発に柔軟性を持たせることも可能です。
サイドチェーン実装が実現すれば、リスクのネットワーク全体の性能が向上するため、今はイーサリアム一強であるdApps構築プラットフォームとして、選択肢が増えるかもしれません。

まとめ

今回は、サイドチェーンの特徴や作られた背景をはじめ、セカンドレイヤーとの違い、そしてサイドチェーンの事例について解説しました。
サイドチェーンとは、メインチェーンとは別にトランザクション処理を行うブロックチェーンであり、スケーラビリティ問題の解消を目的として作られました。
似たような概念にセカンドレイヤー(レイヤー2)がありますが、サイドチェーンはメインチェーンの機能拡張などが可能であり、技術的には異なります。
メインチェーンの機能拡張や独自トークンの発行、そしてセキュリティ向上といったメリットがありますが、一方で安全性の不安とマイニングの集中などが課題です。
この記事を参考に、そのプラットフォームはサイドチェーンなのかセカンドレイヤーなのか、見分ける判断材料としていただければ幸いです。

参考文献

サイドチェーンとは?ブロックチェンの機能を拡張する技術の特徴や問題点を解説!

ブロックチェーンの側鎖となる概念「サイドチェーン」

セカンドレイヤーとサイドチェーンは何が違うの?仮想通貨に関する素朴なギモンに答えます

レイヤー2とサイドチェーンの違いとは?

レイヤー2ソリューションとサイドチェーンの相違点

Liquidネットワークについて

Rootstock/RSK(ルートストック/アールエスケー)

リスク(Lisk)とは?