Web3(Web3.0)時代の次世代SNS「Steemit」とは|Web3.0の基本知識からトークンの仕組みまでわかりやすく解説
Twitter、instagram、Facebook、TikTokなど、私たちの生活にSNSは切っても切り離せない存在となりました。そんな中、近年ブロックチェーンを活用した新しいSNSが密かに注目を集めていることをご存知でしたか?
そのSNSの名前はsteemit(スティーミット)。Web3.0時代の次世代SNSとも呼ばれています。この記事では、工学博士を取得し、株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴直彦が、Web3.0とは何なのかという基礎知識から、steemitの仕組みまでわかりやすく解説します。
目次
1.Web1.0とは
1-1世界初のWebページ誕生
1990年12月20日、世界初のWebページが公開されました。WWW(World Wide Web)を開発したのは、欧州原子核研究機構(CERN)のティム・バーナーズ=リー。WWWが誕生した瞬間、それは彼の研究仲間の複数のコンピュータを繋いだものという、極めてシンプルなものに過ぎませんでした。これが、Web1.0の始まりです。
2.Web2.0とは
2-1 中央集権型社会を生きる私たち
それから30年が経った今、WWWはとてつもないほどの進化を遂げたことは、皆さんもご存知でしょう。今や個人がTwitterやInstagram、YouTubeで自由に発信できる時代です。この瞬間でさえも、世界中で膨大な量のモノ・カネ・情報がインターネット上でやりとりされています。誰よりも早く、このインターネットの未来を予測した一部のアントレプレナー(起業家)たちはGoogleやApple、Facebook、Amazonなどのテック企業を立ち上げ、今や莫大な富を手にしています。今、私たちは、Web2.0の時代を生きているのです。
私たちは、インターネットの発達によって信じられないほどの恩恵を受けました。しかし、それと同時に、プライバシーの侵害や富の集中、情報の格差といった新たな問題が出てきたのも事実です。これらの問題の根本的な原因は、Web2.0時代のインターネットが中央集権的な構造にあることです。一部のプラットフォーマーが情報を蓄積し、それを利用してさらなる情報とお金を集める。これが何度も何度も繰り返され、一握りの勝者と残り大半の敗者といった大分断が生まれてしまったのです。
2-2 いよいよWeb2.0に終焉の兆しか
そんな風向きが変わったのは、今から5年ほど前のことでした。2016年4月にEU域内で個人データやプライバシーの保護を規定する法として「GDPR (General Data Protection regulation:一般データ保護規則)」が制定され、2018年5月25日に施行されました。DLA Piperの調査によると、このGDPRの運用開始から約2年8ヶ月の間に、EU個人データ当局が科した制裁金の総額は約351億円(約2億7250ユーロ)であると報告されています。
この中で、最も大きな制裁金が課せられたのは、2019年1月のフランスにてGoogleへ科せられた制裁金約64億円(5000万ユーロ)です。違反内容は、広告に関する不透明性と本人への情報提供の欠陥と同意取得の不備です。それに加え、2020年12月フランスにて、同社は新たに個人データ保護監督機関CNILによって約126億円(1億ユーロ)、Amazonに対しても約44億円(3500万ユーロ)の制裁金を命じる決定を下しました。
CNILの決定では、Googleの検索サイトを訪問した時点で広告用クッキーが埋め込まれる仕組みになっており、第一に、事前に利用者に対しクッキーに関する明確かつ完全な情報提供を行っていなかったこと、第二に、広告用クッキーについて利用の同意を得ていなかったことが違反の根拠とされました。Amazonに対する制裁金についても、同様の違反根拠が指摘されています。遂に世界は、Web2.0時代の中心に君臨するテック企業の巨人たちへの規制を強化したのです。
さらに2021年10月22日、経済協力開発機構(OECD)で検討が進められてきた「デジタル課税」の主要な項目について、最終合意がなされました。今までの国際課税の制度では、自国に支店や工場(PE)がない外国企業の事業所得には課税ができないとの原則がありました。今回のデジタル課税の合意では、従来の原則では課税できなかった巨大テック企業をはじめとするインターネット企業に課税をするという、今までの原則を根本的に覆すような合意なのです。
これらの規制や法制度の改正を受け、巨大テック企業が衰退するということは考えにくいですが、今までの中央集権的なWeb2.0が終焉を迎えつつあることは間違いないでしょう。
3.Web3.0とは
3-1 ブロックチェーンを基盤とした分散管理の時代
これから迎えるWeb3(ウェブスリー/Web3.0)の時代は、情報管理のシステムが非中央集権的になった新しいインターネットの時代と考えられています。Web2.0のデータ独占や改ざんの問題を解決する概念として構想されているWeb3.0ですが、その中核には「ブロックチェーン技術」の存在があります。
ブロックチェーン技術は、その特徴として①非中央集権的②データの耐改ざん性③システム利用コストの安さ④ビサンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)ことが挙げられます。その特徴を生かすことで、個人情報は特定の企業ではなく、ブロックチェーンに参加したユーザーによって分散管理されるようになります。また、サービスを提供する基盤は特定企業に限定されず、ユーザー一人ひとりが参加するネットワークがサービスを提供する基盤となるのです。
このような分散管理のもとでは、ユーザー同士がネットワーク上でお互いのデータをチェックしあうため、不正アクセスやデータの改竄が非常に難しいです。そのため、GAFAをはじめとする巨大テック企業が個人情報を独占することもなければ、情報漏洩によって多大な被害を被ることもありません。まとめると、Web3.0時代では不正アクセスや情報漏洩、データ改竄のリスクが軽減し、Web2.0の問題点が解決されると考えられているのです。
3-2 Web3.0時代の次世代SNS「Steemit」とは
しかし、ここまで読んできた読者の中には、このような疑問を抱えている方もいるかもしれません。
「Web3.0が魅力的な理想像であることは分かった。だが、現実的な話として”お金”はどう動くのだろうか。世界が資本主義経済として動いている以上、Web3.0を作っていくクリエイターにはお金が入ってくるはずであり、ボランティアでは成り立たない。Web2.0においてクリエイターは広告収入を得ることをインセンティブに働いたが、それに代わる収益体制がWeb3.0においては必要なのではないか。」
確かに、Web3.0やブロックチェーン業界全体において、収益化の問題は大きな課題の一つです。ここで、Web3.0時代のSNSやインターネットサイトの収益体制の在り方のひとつとして、広告収入に頼らないトークンモデルを構築しているサービスを紹介しましょう。Web3.0時代の次世代SNS「Steemit」です。
Steemitとは、Steemが運営するブロックチェーンネットワークを基盤とする記事投稿サービスです。基本的な使用方法はWeb2.0と変わらず、noteのようにユーザーが自由に記事を投稿したり、他のユーザーがその記事に対して「いいね」やコメントをつけたりすることができます。
では、Steemitと従来のSNSとでは一体何が違うのか。それは「広告に依存しない収入体制」にあります。Steemitでは、広告が一切存在しないにもかかわらず、記事を投稿したり記事を評価すると報酬がもらえることです。報酬としてもらえるトークンは、CoinCheckなど外部の取引所でも売買することが可能なので、様々な仮想通貨や現金と交換することが可能なのです。そしてSttemitでは「良い記事を投稿し、良い記事を評価する」という活動のみトークンが支払われる仕組みになっているので、それが経済的インセンティブとなって自立分散的にクオリティの高いコンテンツが増えていくという仕組みになっているのです。
3-3 Steemitのトークンモデル
この仕組みを実現できるのは、Steemitの非常に緻密に構築されたトークンモデルのおかげです。実際には仕組みなど知らなくても誰でも利用できるものですが、興味のある読者のために、ひとつひとつ解説していきます。
まずSteemitでは、以下の三つの性質の異なるトークンが使われています。
- SP(Steem Power):保有していると利子がもらえる。すぐには交換できない。
- SBD(Steem Blockchain Dollars):1SBDが1ドルに連動する。すぐに交換できる。
- STEEM:SPとSBDに価値を与える。ゲイブ取引所で取引することができる。
そしてSteemitでのユーザーへの報酬はSPやSBDとして50%ずつ支払われます。SPは保有していると利子をもらうことができるため、ユーザーはSPの形でトークンを保有しようとするインセンティブが働きます。スチーム(Steem/STEEM)からSPへの交換はすぐに行うことができますので、外部取引所から仕入れたSTEEMをSPへ交換することが、経済合理性にかなった行動ということができるでしょう。一方でSPからSTEEMへの交換はある程度制限されており、STEEM価格の急落を防いでいます。
一方で、SBDは1ドルの価値として連動しているのが特徴で、SBDで保有していても利子はつきません。それでもなぜSBDが存在しているのかというと、仮想通貨やトークンに慣れ親しんでいないユーザーにもSteemitを利用してもらうためです。SPやSTEEMは価値の単位がSTEEM表記なので、仮想通貨やトークンに慣れ親しんでいないユーザーにとっては、一見その価値がよくわかりません。しかしSBDはドル表記なので、実子あにそのトークンの価値が一般ユーザーにも理解しやすくなっているのです。なお、SBDとSTEEMの交換は容易に行うことができます。
このように、3種類の性質の違うトークンがそれぞれの役割を果たし、Web3.0時代における新たな収益体勢の一つの答えを与えてくれています。現在、Steemitの利用者数は全世界で100万人を超えており、最大のユーザー数を持つ分散型アプリケーション(Dapps)の一つとしても数えられます。Web3.0の時代を切り開いていくアントレプレナーの方々、そしてブロックチェーンに興味がある方は、これからも注目すべきサービスと言えるでしょう。
4.まとめ
今回はWeb3.0の基礎知識、そして次世代SNS「steemit」について解説しました。
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また、株式会社AIGRAMではブロックチェーン/AI技術を用いたWeb開発やアプリ開発、エンジニア育成、技術コンサルのご依頼を承っています。興味がある方は、ぜひコチラからご連絡ください。
参考文献
ZOOM『広告収入に依存しないWebメディアの新モデル「Steemit」とは』
COIN TOKYO『Steemitとは 仮想通貨Alisが参考にした稼げるSNS-収益の仕組み,使い方等換金方法を解説』