Storj(ストージ/ストレージ)とは?|仕組みや料金、将来性について解説

by AIGRAM

「最近よくStorj(ストージ/ストレージ)って聞くけど、一体どんなサービスなんだろう?」

「分散型クラウドストレージってなに?従来のiCloudやGoogle Driveなどのクラウドとは何が違うの?」

そんなふうに思っている方もいるのではないでしょうか。

今回は、工学博士を取得し、株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴直彦が、ブロックチェーンを活用した新たなストレージサービス「Storj」について、一からわかりやすく解説します。

目次

1.クラウドコンピューティングとクラウドストレージ

まずはクラウドストレージサービスの前に、さらに広義の概念となるクラウドコンピューティングについて軽く解説します。

1-1 クラウドコンピューティングとは?

クラウドコンピューティングとは、コンピュータの利用形態の一つです。インターネットなどのネットワークに接続させたサーバーが提供するサービスを、利用者はネットワーク経由で手元のパソコンやスマートフォンで使用できます。

1-2 クラウドストレージサービスとは?

そして私たちが一般的に利用しているiCloudやGoogle Driveといった「クラウドストレージサービス」は、このクラウドコンピューティングにおいてサーバーがストレージをユーザーに提供してくれているサービスということになります。

1-3 クラウドストレージサービスを利用するメリット

クラウドストレージサービスを利用することで、私たちは多くの恩恵を享受する事ができます。例えば仕事やプライベートにおいて、多くのストレージを必要とするファイルをダウンロードする必要があるときのことを考えてみましょう。もしクラウドストレージサービスがなければ、それらのファイルをダウンロードできるだけのストレージをスマートフォンやパソコンなどの端末に確保する必要があります。もちろん、ストレージの大きな端末を購入するならそれなりの費用がかかりますし、それでも容量が足りない場合は外付けHDDなどを購入する必要があるでしょう。しかも、情報を記憶させている唯一の端末を水没させてしまったり物理的な衝撃で壊してしまった場合、それらを復元させることは限りなく不可能に近くなるでしょう。

これらのリスクや問題は、クラウドストレージサービスを使用することによって回避する事ができます。クラウドに保存した情報はサービスの提供元のサーバー上に保存されますから、万が一端末を壊してしまった場合でも情報は復元できます。外付けHDDを購入する必要も、容量の大きな端末を購入する必要ももちろんありません。またクラウド上に保存した情報は他の人との共有が容易であり、チームで作業を進めたい時などに大きな力を発揮します。

1-4クラウドストレージサービスの問題点

このように、非常に便利なクラウドストレージサービスですが、「データが改ざんされやすい」「安全性が低い」といった問題が指摘されることもあります。そしてこれらの問題の多くは、クラウドストレージサービスが、サーバーを一つにして管理する中央集権的な構造になっていることが原因です。

情報をサーバーで集中管理するということは、ハッカーからしてみれば、そのサーバーさえハッキングしてしまえば情報を盗み出す事ができます。また、場合によっては管理者による検閲が行われ、データがコピーされたり持ち去られる可能性もあるのです。

しかも、もしサーバーがダウンしてしまった場合、そのサーバーが大きければ大きいほどその影響は広範に及びます。2021年第1四半期の調査会社のCanalysによると、世界のクラウドにおけるシェアはAWSが32%、Azureが19%、Google Cloudが7%となっており、上位3つのクラウドが全体の6割弱のシェアを占めるという結果になっています。そのため、AWSのクラウドが万が一ダウンしてしまった場合は、最悪のケースでは世界中の32%のクラウド利用者に影響が出るという事です。

実際、これら中央集権的な構造の弊害は何度も確認されています。例えば2021年9月2日に発生したAWSの大規模障害では、三菱UFJやみずほ銀行のスマートフォン用アプリ、SBI証券などネット証券のウェブサイト、KDDIのau Payなど金融系サービスが影響を受けたほか、全日空では羽田空港などのチェックインを行うシステムに障害が発生、日本航空では貨物の情報に関わる一部のシステムに影響が出るなど、幅広い社会サービスが影響を受け、大きな問題になりました。

2.分散型クラウドストレージ「Storj(ストージ/ストレージ)」

以上のように、中央集権的なクラウドストレージには、セキュリティなどに大きな弱点を抱えています。では、これらの問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。それは、クラウドストレージを「中央集権型」ではなく「分散型」で管理することです。そしてそれを実現したのが分散型クラウドストレージである「ストージ(Storj/STORJ)」です。

2-1 Storjとは

StorjはブロックチェーンとP2Pを利用して、分散型の管理を実現しています。ここでP2P(Peer to Peer)について少し解説します。P2Pとは個対個の通信方式のことです。従来のクラウドサービスでは、コンピュータ同士はサーバーとフライアントという主従関係がはっきりした状態で通信を行なっていました。しかしP2Pにはこのような主従関係はなく、コンピュータ同士は対等な存在として通信を行うのです。

また、Storjでは、取引されたデータ(トランザクション)はハッシュ関数により暗号化されます。ハッシュ関数はデータごとに異なる値を示すことに加え、値は不可逆性を持つため、元のデータを読み取ることはできません。そしてこのトランザクションをまとめたもの(ブロック)を時系列に並べたものがブロックチェーンであり、Storjではこのブロックチェーンを使ってデータを管理しているのです。

2-2 Storjの仕組み

次にStorjを利用してデータファイルを保存する流れについて解説します。まずStorjは、ファイルを32MB単位に細分化し、Shard(シャード)と呼ばれる断片に変えます。このように細分化する利点は大きく2つあります。1つ目は安全性です。ファイルを細分化すると、万が一暗号が解かれてしまった場合にファイル全体をそのままネットワークに流してしまった時に比べて影響を小さくする事ができます。また、シャードの数が増えると、指数関数的にそのファイルの位置を特定するのが難しくなります。つまり、ネットワークの大きさに比例してセキュリティがより高くなっていくのです。

もう一つの利点は、シャードが細かいと、より大きいファイルを扱う事ができるという点です。ファイルが大きいときに生じる問題点として、ファイルの受け入れ先に大きな負担がかかることが挙げられます。そのためファイルを細かく分け、複数のストレージ提供者に分散してデータを保有してもらうことによって、その負担を分散させる事ができるのです。
ここで勘の鋭い方なら「ファイルを細分化して複数のストレージに保管するのはいいが、本当にそれを復元できるのか」という疑問を持つ方もいるでしょう。もちろん、全く心配する必要はありません。なぜなら、ファイルを所有している人は、自分のファイルを構成するシャードの位置情報を持っているからです。ファイル所有者は、シャードの位置情報を使って、そのシャードを持つストレージ提供者にファイルを要求し、集めたシャードで元のファイルを復元します。復元したファイルは暗号化されているので、自分の持っている鍵で暗号を解くことでファイルを閲覧できるようになります。

3.Storjと他サービスとの料金比較

最後に、Storjの利用料金について見ていきましょう。
Storjとその他クラウドサービスの料金プランの比較は以下の通りです。

3-1 Storjの利用料金

保存料:0.015ドル/GB・月(約1.8円/GB・月)
転送料:0.05ドル/GB(約6円/GB・月)

3-2 iCloudの利用料金

〜5GB:無料
〜50GB:130円/月
〜200GB:400円/月
〜2TB:1300円/月

3-3 Google Driveの利用料金

〜15GB:無料
〜100GB:150円/月
〜1TB:1300円/月
〜10TB:13000円/月
〜20TB:26000円/月
〜30TB:39000円/月

3-4 Dropboxの利用料金

〜2GB:無料
〜2TB:1200円/月

このように比較してみると、15〜70GB程度のデータを保存するだけならStorjが最もリーズナブルである事がわかります。もちろん、Storjには転送料(ファイルをクラウド上からダウンロードするのにかかる料金)がかかってきますので一概に比較はできませんが、1GBずつ購入できるStorjは料金面でも他のサービスに劣ることのない大きな魅力を持っていると言えるでしょう。また、Storjは自分の余っているストレージを貸し出すことで、利用料で収益をあげることもできるのです。

4.まとめ

今回はブロックチェーンを使った分散型クラウドストレージサービス「Storj」について解説しました。

このサイトではブロックチェーンに関連したビジネスや暗号通貨についての記事を発信しています。今回の記事が良かったという方はぜひ他の記事もチェックしてみてください。

また、株式会社AIGRAMではブロックチェーン/AI技術を用いたWeb開発やアプリ開発、エンジニア育成、技術コンサルのご依頼を承っています。興味がある方は、ぜひコチラからご連絡ください。

参考文献

BITDAYS『Storj(ストレージ/STORJ)の特徴、価格、将来性は?』

CoinPartner『STORJ(ストージ)とは?分散クラウドストレージ取引で使われるコインの仕組み・使い方・購入方法を解説!』

Publickey『グローバルのクラウドにおけるシェア、AWSが32%、Azureが19%、Google Cloudが7%。上位3社で全体の6割近くを獲得。2021年第1四半期、Canalysが発表』

ITMedia『AWSの大規模障害、原因はネットワークデバイス 新プロトコル処理に潜在的なバグ』

Storj公式HP