【脱ハンコ文化】ブロックチェーン証明書の6つのメリット|LasTrustが挑む証明書の未来
最近、よく「ハンコは不要だ!」という意見を耳にするようになりました。
これは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いテレワークが急増したことにより、ハンコを押すためだけに出社すること(いわゆる「ハンコ出社」)に疑問を持つ人が増えてきたからです。
しかし、ハンコは「この文章は間違いなく本人が作ったものである」という証明の意味がありますから、それが無くなると困る人も当然出てきます。
そして、このハンコ問題を解決する技術が、ビットコイン(BitCoin/BTC)などの暗号通貨の基盤技術であるブロックチェーンを活用した「ブロックチェーン証明書」です。
この記事では、工学博士を取得し、株式会社AIGRAM代表取締役兼Fintech(ブロックチェーン)系ベンチャー企業のCTOを務めている伴直彦が、ブロックチェーン証明書サービス提供で第一線に立つ株式会社LasTrustの取り組みと、ブロックチェーン証明書を利用する6つのメリットについて詳しく解説していきます。ぜひ最後までお楽しみください!
目次
LasTrust株式会社とは
LasTrus株式会社は2019年に創業された日本発スタートアップ企業であり、「見えざる個人の価値を可視化する」をキーワードに、ブロックチェーン証明書を主軸に、デジタル証明書の発行に特化したDX 事業を展開しています。具体的には、卒業修了証書やスタディログ、有資格証、製品保証書、社員証、財務諸表など、本来は紙などのアナログで記録されている様々な「証明」をデジタル化し、ブロックチェーン技術で改ざんを不可能にした「ブロックチェーン証明書」を発行しています。
この「ブロックチェーン証明書」の実現を可能にしているのが、ブロックチェーン証明書発行SaaSである「CloudCerts(クラウドサーツ)」です。CloudCertsを使用することにより、紙の証明書やJPG、PDFなどの画像データを、安全なブロックチェーン証明書へ変換することができるのです。
ブロックチェーン証明書を利用する6つのメリット
では、同社が発行している「ブロックチェーン証明書」を利用するメリットとは何なのでしょうか。もしかすると、JPGやPDFなどの「デジタル証明書」と「ブロックチェーン証明書」の違いが、正直よくわからないという方も少なくないかもしれません。そこでこの記事では「紙の証明書」、「デジタル証明書」、「ブロックチェーン証明書」を比較しながら、ブロックチェーン証明書の他の証明書と比べて優れている点を6つ解説します。
①証明書の高い信頼性とセキュリティ
従来の紙の証明書やデジタル証明書の大きな問題は、偽造や改ざんが容易であることでした。そのため企業側は提出された証明書の真偽を発行元に確認する必要があり、それが業務を圧迫する要因となっています。しかし、ブロックチェーン証明書は改ざんが非常に困難であり、高い信頼性とセキュリティ面の安全が保証されています。また、紙やデジタル証明書では必要だった証明書の真偽の確認も不要であり、業務の効率化も図ることができるのです。
②押印作業が不要
紙の証明書では、「この文章は間違いなく本人が作ったものである」ことを証明するために押印をします。日本では昔から、重要な契約や届出の際には押印がないと不備があるとして書類を受け付けてもらえないことが慣習として多々ありました。そのため新型コロナウイルスの影響でステイホームが強く呼びかけられた時期にも、ハンコを押すためだけの「ハンコ出社」や、押印できないために業務が滞留するといったケースが見られ、大きな問題となりました。
このような問題の多いハンコ文化を脱するべく、PDFなどのデジタル証明書においては電子印鑑や電子署名が多く利用されるようになり、「ハンコ出社」の問題は徐々に改善へと向かっています。しかし、電子印鑑や電子署名は別途システムの構築や手続きが必要であり、電子機器に慣れていない人の場合はかえって手間や時間がかかってしまう可能性があります。また、たとえ紙の文書に印鑑が押してあったり、電子印鑑が利用されていたりしても、真に「この文章は間違いなく本人が作ったものである」という証明にはなりません。なぜなら、物理的な印鑑や電子印鑑のデータを手に入れてしまえば、いくらでも偽造は可能だからです。
それに対し、ブロックチェーン証明書はそもそも改ざん自体が不可能に限りなく近いので、押印や電子印鑑、電子署名をする必要すらありません。ブロックチェーン証明書はブロックチェーンのアカウントで管理されていますが、その事実こそが「この文章は間違いなく本人が作ったものである」という証明になっているのです。
③URLだけでも送付できる
紙の証明書を相手側に渡そうとすると、それはもう骨の折れる作業です。送付先の住所を確認し、印刷、封入して発送を行う。その際にはもちろん発送代金が必要ですし、届くまでに何日もかかってしまいます。一方、デジタル証明書の送付は紙の証明書の送付と比べて、そこまで大変な作業ではありません。なぜなら、メールでファイルを添付したら一瞬で届くからです。さらにブロックチェーン証明書では、従来のデジタル証明書のようにファイルを送付するほか、証明書を管理しているブロックチェーンのアカウントをURLで送ることができるため、メールサイズの削減などの様々なメリットが期待できます。
④原本の保管・管理が容易
紙の証明書の場合、紙の原本の保管が必要になってきます。これはセキュリティ上、大きな問題があるうえ、管理に際して多くのコストがかかります。また、デジタル証明書でも改ざんや流出を防ぐため、セキュリティが担保されたサーバが必要となってきます。
一方でブロックチェーン証明書はブロックチェーン上に原本の写しを記録しています。そのため保管や管理も、セキュリティの高いサーバも必要ありません。さらに原本はチェーン上に永久的に保管され、チェーン上に記録し続ける管理費はゼロです。しかもこの原本はスマートフォンやブラウザ上で簡単に表示・管理・送付できます。
⑤パブリックブロックチェーンを使用している
ブロックチェーンは、参加者に制限があるのかどうかにより「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」「コンソーシアムチェーン」の3種類に大別できます。パブリックチェーンは参加者に制限がなく、誰でも取引に参加できます。一方で世界にノードがいくつ存在しているのかを正確に数えることはできません。そのためパブリックブロックチェーンはセキュリティが非常に高く、完全な非中央集権型である一方で、スケーラビリティが低いという特徴があります。
一方でプライベートチェーンは、そのブロックチェーンに参加するのに、それを管理するコンピューターの承認が必要となるため、動作しているノードの数を特定できます。これによってネットワーク上での仕様変更を独断で進めることができるので、情報の共有内容と範囲を限定でき、スケーラビリティが高い一方で、独裁も可能でやや中央集権的です。そのためセキュリティにもパブリックブロックチェーンと比べると低くなってしまうという特徴があります。
コンソーシアムチェーンはネットワークへの参加者を複数の組織や個人で承認できたり、限られた主体での合意形成で仕様変更できたりするタイプのブロックチェーンです。ちょうどパブリックチェーンとプライベートチェーンの間をとったような仕組みであり、スケーラビリティ、非中央集権性、セキュリティどれをとってもパブリックチェーンとプライベートチェーンの間です。
ブロックチェーン証明書は、証明書の書式とそのデータが正しいことを検証する機能がオープンソースであり、さらに証明書のデータは「パブリックブロックチェーン」上に記載されています。そのため、証明書発行元が閉業、あるいはLasTrust株式会社がサービスを停止した場合でも証明書の正しさが担保され、非中央集権的にデータの信頼性が持続するのです。
⑥情報漏洩リスクが低い
「ブロックチェーンに証明書データを記録する」と言うと、証明書の具体的内容の平文が記録されるイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、そうではありません。実際は、証明書のデータは個人情報を直接記録しないために暗号化(ハッシュ化)され、「jd679a8hda7hu…」のような意味を持たない文字列で記録されます。そのため、ブロックチェーンから情報漏洩するというのは構造的にありえないことなのです。
LasTrustのこれから
LasTrustはCloudCertsをあらゆる業界の業務フローにて使用できるように、発行APIである「CloudCerts Connect」も提供しています。これにより、各事業者のシステムへの繋ぎ込みやブロックチェーン証明書の自動発行・自動送付が可能となっています。
2020年8月、LasTrustはオリックス銀行と基本合意書を締結し、ブロックチェーン技術を活用した証明書発行業務のデジタル化に向けて検討・協議を開始しました。2021年4月には角川ドワンゴ学園N高等学校の卒業生4300名に対しブロックチェーンの卒業証明書の提供を行いました。
これらのLasTrustの取組みは大きく話題になり、日本経済新聞や東洋経済オンライン、現代ビジネスやJIJI.COMなど様々な有名メディアに大きく掲載されました。今後LasTrustのブロックチェーン証明書技術は、様々な分野で活用されることが見込まれています。同社の今後の活躍が期待されますね。
まとめ
今回は、株式会社LasTrustの取り組みと、ブロックチェーン証明書を利用する6つのメリットについて解説しました。
このサイトではブロックチェーンに関連したビジネスや暗号通貨についての記事を発信しています。今回の記事が良かったという方はぜひ他の記事もチェックしてみてください。
また、株式会社AIGRAMではブロックチェーン/AI技術を用いたWeb開発やアプリ開発、エンジニア育成、技術コンサルのご依頼を承っています。興味がある方は、ぜひコチラからご連絡ください。
参考文献
美術手帖2018年12月号『特集 アート×ブロックチェーン』,美術出版社
Pythonで動かして学ぶ あたらしいブロックチェーンの教科書, FLOG著, SHOEISYA出版
LasTrust『ブロックチェーン証明書と紙の証明書の違いとは』